12年11月2日、トヨタ創立75周年記念式典で豊田社長はこう語った。「必ずしも私が現役世代のときに花開かなくてもいい。先人たちがそうしてきたように、次世代のための姿勢が大切だ」。すぐに利益が出なくても、汗を流して種を蒔けば、いずれ必ず刈り取ることができるという意味である。とことん突き詰めていく力に加えて長期的な視野で仕事に取り組むことも「真の競争力」につながるだろう。
よく考えれば、上司や先輩に鍛えられる社員を育て、そうした人材が長期的な視点で仕事に取り組む姿は、日本の製造業の競争力が強かった時代にはあちこちの企業で見られた。要はトヨタが求める「真の競争力」とは、こうした経営スタイルを忘れずに時代の流れも見ながら新しい考えを取り込んでいくことではないだろうか。当然と言えば当然のことなのだが、昨今の大リストラを展開している日本の電機メーカーの現状を見る限り、その当然のことを日本企業は忘れ過ぎていると筆者は感じる。
トヨタはこれまでの強みを維持しながら、21世紀に合った新しい経営スタイルをいかに構築できるか。日本経済の浮沈にも大きく影響してくる。