なぜなら老後生活のうち、最もお金がかかるのは介護を必要とする最後の数年間。この時期に有料老人ホームに入るつもりなら、それなりの費用が必要になるだろう。
侮れないのが「想定外の出費」。若い頃には予想できなかった出費には、どんなものがあるかを調査したところ、第1位は家のリフォームという結果となった。
「家のリフォームと2人の子供の結婚費用で、退職金を軽くオーバーした」(74歳・男性)「こまめにメンテナンスしておけば、まだまだ改築しなくてよかったのに」(62歳・女性)「老後のために、余裕のあるときにリフォームしておけば……」(74歳・男性)。
北見さんは次のようにアドバイスする。
「家のリフォームは、持ち家である限り覚悟しておいたほうがいいですね。それから体の丈夫な人の盲点が入れ歯。インプラントは1本30万円程度と高額です。実は家のリフォームと歯の治療には共通点があって、どちらも本当にひどくなるまで、つい放置してしまう。すると余計に出費がかさみますから、早めの手当てが結局はお得です」
さらなる盲点は教育費。就職難のため大学院への進学を選んだり、希望通りの就職先が見つかるまで留年する学生が増えている。
「親が自分たちの老後をしっかり考えていないと、つい子供の教育費に使ってしまいます。ここはぜひ『大学までしか面倒を見ないよ』『留年は許さないよ』などと強めの言葉で釘を刺しておいてください。ちゃんとした子供なら理解してくれて、それなりの進路を選ぶはず。そのためにも親はきちんと老後のお金について考えておきましょう。なんといっても、子供に伝わる『気迫』が違いますから(笑)」
ファイナンシャルプランナー、消費生活アドバイザー
北見久美子
個人相談や雑誌のマネー相談など、これまで数千件の家計を見てきた。生活者の視点で提案と情報を発信。著書に『親のお金の守り方』など。
北見久美子
個人相談や雑誌のマネー相談など、これまで数千件の家計を見てきた。生活者の視点で提案と情報を発信。著書に『親のお金の守り方』など。
(澁谷高晴、今清水隆宏=撮影)