今年再稼働がありうるのはごく一部

原発の再稼働は、(1)の新しい規制基準をクリアすることが大前提となる。そうであるとすれば、新規制基準でフィルター付きベントの事前設置が義務づけられた沸騰水型原子炉(24基)の再稼働は、事実上、15年以降でなければありえない。今年中の再稼働がありうるのは、新基準でフィルター付きベントの設置に猶予期間が設けられた加圧水型原子炉(24基)に限定されることになる。現実に、新基準が設定された昨年7月中に再稼働の申請を行ったのは、当時稼働中であった関西電力・大飯原発3、4号機を含めて12基であったが、これらはいずれも、加圧水型の原子炉であった。

30年の原子力依存度はどうなるか

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「40年廃炉基準」が適用された場合の2030年末時点での原子力発電所の運転状況

ここで注目すべき点は、新基準が設定された昨年7月の時点で加圧水型24基に再稼働申請のチャンスがあったにもかかわらず、実際には12基しか申請しなかったこと、逆に言えば、12基が申請しなかったことである。新基準をクリアするためには、フィルター付きベントの設置だけでなく、膨大な金額の設備投資が必要とされる。

一方、(2)の「40年廃炉基準」が厳格に運用された場合には、多額の追加投資をした原発が新基準をクリアし、いったん再稼働したとしても、すぐに運転を止めなければならなくなるかもしれない。12基の加圧水型原子炉が7月の時点で再申請をしなかった事実は、電力会社がこれらの事情をふまえて取捨選択を始めており、「古い原発」の再稼働を断念し始めていることを示唆している。今後、ある程度の原発が再稼働することになるであろう。しかし、それは、既存の48基すべてが「元に戻る」再稼働では決してなく、沸騰水型原子炉も含めて当面30基程度の原発の運転再開が問題となる「減り始める」再稼働であることを、きちんと見抜いておかなければならない。

「40年廃炉基準」を厳格に運用した場合には、表にあるとおり、30年末の時点で、現存する48基のうち30基の原子力発電設備が廃炉となる。残るのは、18基1891万3000キロワットだけである。この18基に建設工事を再開した中国電力・島根原発3号機と電源開発・大間原発が加わったとしても、30年の原子力依存度は、10年実績の26%から4割以上減退して、15%程度にとどまることになる(一昨年の基本問題委員会での資源エネルギー庁の試算)。30年における電源ミックスは、原子力15%、再生可能エネルギー(水力を含む)30%、火力40%、コジェネ15%となるのではなかろうか。

(平良 徹=図版作成)
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