「N-WGNとは逆に、我々は主戦場から入った。その後、スーパーハイトを投入する順番です」。こう話すのは、NMKVの後昭彦・開発グループプロジェクトマネジメントチーム次席最高技術責任者。11年に設立したNMKVは日産と三菱自工の軽自動車開発の合弁会社だ。
まず主戦場であるハイトのジャンルで、日産・デイズおよび三菱自工・eKワゴンを13年6月に商品化した。そして今年2月にはスーパーハイトの日産「デイズルークス」、三菱自工「eKスペース」を発売。スズキのエネチャージと同様に、減速時に発電するシステムを搭載し、こちらはエネルギー密度が小さいが低コストのニッケル水素電池を使っている。
「三強の体制になりつつあるが、セダンを除く乗用で存在感を持ちたい。燃費競争はこれからも続いていくでしょう。登録車から乗り換えるユーザーを含め、軽ユーザーはランニングコストをやはり気にしますから」と後。
NMKVは商品企画と開発を手掛け、生産は三菱自工の水島工場が担っている。ところが、日産は九州工場で自社生産に乗り出す気配を見せている。「(自社生産を)否定はしない。ただし、グローバル市場でも通用する小さな車も考えたい」(日産首脳)と言う。次の新型軽に加え、軽自動車ベースで排気量800ccクラスのエントリカーを、日産は自前で生産していく公算が強くなっている。今は軽が4割を占めるほど売れ、全メーカーが潤っている。だが、「日産の工場は、スズキの工場よりも壁が厚い。価格が安い軽で持続的に利益を出すのには、コスト思想を根本的に変える必要があるのでは」(部品メーカー首脳)という声も聞こえる。
燃費競争が展開される軽自動車は国内の独自規格だが、世界にも通じている。ダイハツが昨年9月インドネシアで発売した小型車「アイラ」およびトヨタに供給する「アギア」は、同国政府の低価格・環境対応車政策に対応した優遇税制適応の第一号車。2車種は、イーステクノロジーで開発された。
スズキはエネチャージを、「インドなどアジアにも展開していきたい。どこの国でも、低燃費は求められているから」(鈴木修)と言う。さらに、オルタネーターをモーターに替えればエネチャージは発進をアシストする簡易なHVになる。渋滞が多い日本と違い、長距離を走る欧州では本格的なHV以上に、有効活用されていくはずだ。軽自動車の“仁義なき低燃費の戦い”は、世界を動かしていく。
(文中敬称略)