早く昇進しても、その後の展望ゼロ
戦後の日本型経営は、景気も右肩上がり。年功序列・終身雇用で生涯の賃金が保障されていた。ところが、グローバル化した市場経済では人件費が高くては生き残れない。実力次第で若者にも権限を与え、活躍できる場を、と成果主義を導入する会社が増えた。しかし、企業の利益は増加しても、従業員には還元されない。
今は厳しいとき。会社という船が沈んでは元も子もないだろう。我慢しろ。我慢できないなら辞めてもらって結構。社員は利益を生み出す消耗品でしかないという考え方だ。
大量に採用し、労基法無視で長時間働かせる。できない人はパワハラなどで自己都合退職に追い込まれる。実績をあげた者は店長・所長に昇進させるものの、昇進しても管理職だからと残業代を払わない。なんとか正社員として働きたいという若者の願いと、労働法を知らないことにつけ込んだ悪質な手口。これでは将来の設計ができるはずもない。辞めていく若者が多いのは当然だろう(図3)。
就職後、3年以内に離職した理由をみると、その多くは待遇にある(図4)。「ゆとり世代」だから辛抱が足りないのではない。実際、厚生労働省が昨年末に発表した過酷な労働を強いる「ブラック企業」の疑いがある企業5111社への立ち入り調査で、全体の82%に当たる4189の企業・事業所で違法な時間外労働など労働基準関係法令の違反があったことがわかった(図5)。
1230事業所で1カ月当たり80時間を超えており、そのうちの6割(730社)が過労死の認定基準の月100時間を超える残業をさせていたのだ。決して小さい会社ばかりではない、企業規模別では従業員数300人以上が約31%で最も多かった。