日本は島国だが、地球科学的には巨大な地質堆積物の集積によって日本列島が誕生した。1500万年ほど前に中国大陸から分離して、島の総数1万4125もの列島になった。こうした現象は太平洋に浮かぶ火山島で「生きている地球の現象」として間近に見ることができる。
2013年に小笠原諸島・西之島沖の噴火によりできた島は次第に成長し、旧・西之島を飲み込んで巨大な火山島となった。世界でも珍しい現象で現在も拡大中だが、新たな島の出現は地球内部で起きている現象を知るためのまたとない研究材料の宝庫なのだ。
我が国の領土が増えるなどニュース映像でも紹介されたが、次々と姿を変えてゆく過程は地球科学だけでなく生物学や土壌学など他分野の研究者からも熱く注目されている。
「近年の噴火事例を振り返ると、火山噴火は単に火山灰や溶岩を噴出するだけでなく、これまで考えられていた以上に、大気・海洋を含めた地球表層環境を大きく変化させる可能性がある」(本書5ページ)。
著者は東京大学地震研究所で活火山を調査する第一人者で、世界の火山を巡りながら噴火のメカニズムを研究している。多くの犠牲者を出した御嶽山噴火を詳細に明らかにしたことで、16年に日本火山学会論文賞も受賞した。
本書では西之島など多くの火山島の上陸調査を行ってきた著者が、噴火直後の島でなくては知りえない地球のダイナミズム、そして将来の地球環境はどう変化してゆくのかなど地球科学の基本を、定番「ブルーバックス」らしく丁寧に解説してくれる。
カラー口絵には、実際に火山に行かなければ見られない見事な噴火写真が紹介されており、「百聞は一見にしかず」を実感できる。
歴史を振り返ると火山島の成長過程では、人類の文明を脅かす巨大噴火が発生したことがある。エーゲ海に浮かぶ世界的なリゾート・サントリーニ島では、今から約3600年前に史上最大規模の「カルデラ噴火」が起こり、ミノア文明を滅ぼした可能性があることで話題となった。その後も様々な事実が明らかとなり、「少なくとも現在のサントリーニの姿は、巨大噴火という破壊的な自然現象と文明の興亡が織りなす濃密な歴史の中で生まれたものだ」(108ページ)。
評者も市民講演会でよく取り上げる例が、地震は一つの地域を滅ぼす破壊力を持つが、噴火は人類の文明を滅ぼすまでに至る。さらに巨大噴火は現在の地球温暖化現象をひっくり返し「地球寒冷化」をもたらす力もある。
8月に「南海トラフ地震臨時情報」が発表され、日本列島がいよいよ「大地変動の時代」に入った今こそ、地面の動きを知る入門書として地球科学に縁のなかった読者にもぜひ薦めたい好著である。
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