【森川】最近、LINEを使って、おじいちゃん、おばあちゃんとお孫さんが繋がっているという現象があります。おじいちゃん、おばあちゃんには、ローマ字入力が苦手でメールを打てない人が多い。お孫さんはまだ言葉ができない。でもLINEだとスタンプや写真だけでコミュニケーションができてしまう。面白い現象でしょう。
【山崎】LINEが日本発であることと関係がありそうですね。
【森川】おっしゃる通りです。日本人って、そもそもコミュニケーションにものすごく気を使う民族ですよね。思っていることを言葉ではっきりと相手に伝えることがとても苦手です。そういう民族だからでしょうか、メールになると急に過激になって、誤解や揉め事が多くなってしまう。匿名の場合はなおさらです。それだけにデジタルの世界でも、言葉にならない気持ちというものを、しっかりと伝える手段を提供しなければならないと思うのです。
【山崎】なるほど。僕らがまちづくりをやるときも、一番大切にするのは住民の方の気持ちです。なぜなら、住民の気持ちが動いてくれない限り、まちづくりのプロジェクトは動いていかないんですよ。
【森川】住民の方の気持ちを動かすには、何をすればいいのですか。
【山崎】「このままじゃ、このまち、まずいぜ」的に熱く語って、共通の危機感を持っていただくことが必要な場合もありますが、僕の場合、そういう方法はどうにもならないとき以外には使いません。むしろ、「楽しいからやろうよ」ぐらいの感じが、人を動かすには一番効果的なんです。
【森川】危機感を煽ると、戦いの世界に入ってしまう。
【山崎】そうなんですよ。それよりも商店街の空き店舗を借りて、みんなで手料理を持ち寄ってちょっとしたパーティーをやってみるのも楽しいよと。ただ、それをやるときは道路側の扉はぜんぶ開けて、外から何をやってるか見えるようにしましょうと。そして、誰か知り合いが通ったら、「まあ、座りなよ」って一声かけるだけでいい。まちづくりって、そんな楽しいところから始めればいいんですよって話を、いつもするんです。
1967年、神奈川県生まれ。89年筑波大学卒業後、日本テレビ放送網に入社。ソニーを経て2003年にハンゲームジャパン(現LINE)に入社。07年 から現職。小さな頃から音楽が好きで、いまも特技はドラム演奏。11年に立ち上げたLINEは、2年半で会員数3億人を突破した。
コミュニティデザイナー 山崎 亮
1973年、愛知県生まれ。studio-L代表。京都造形芸術大学教授。人と人とのつながりを基本に、地域の課題をそこに住む人たちが解決していくコミュニティデザインを実践する。『コミュニティデザイン』(学芸出版社)など、著書多数。