同社がここまで多様性に富む働き方を支援するのは、「個々の社員が、自分に合った時間帯で場所を問わずに柔軟に働けるようになれば、個人の仕事の効率と創造性が高まり、『パフォーム・アット・ピーク(個々人の最大限の能力発揮)』が引き出せる」(臼田さん)との全社的な考えがあるからだ。そのため、同社では、社員が世界中どこにいようが問題なく働けるインフラづくりをワールドワイドで進めてきた。
08年には「VCS」というビデオ会議システムを、11年には、米シスコシステムズの「WebEx(ウェブエックス)」という場所を選ばず会議ができるシステムを導入。これにより「自分がどこにいても、世界中に散らばる上司や仲間と、フェーストゥーフェースでコミュニケーションが取れる、ロケーションフリーの働き方が実現した」(吉本さん)。
とはいえ、「三無」が前提の日本的な働き方を長年していると、そのノマド(遊牧民)のような働き方が、どのようなものかピンとこない。具体的に、ロケーションフリーの働き方とはどのようなものなのか?
在宅勤務を取り入れる同社の2人の働き方から、その手法を探ってみたい。
前出の吉本さんは、日本を含むアジア5カ国で、次世代に合った働き方やそれを支えるオフィス環境をつくるプロジェクトを推進している。
現在は、週1回の在宅勤務を取得するが、神戸のオフィスに出勤する日も、複数のプロジェクトを同時に管理するため、日によって仕事をする階や机が違うのだという。また、仕事の報告や相談をする直接の上司はシンガポールにいる。だから、もともと、どこで働こうが、仕事のやり方や質に変化はないそうだ。
「在宅ワークの日は、通勤時間と身支度にかける時間を節約できるから、長時間、集中して働くことができるので、資料や書類作りなど集中を要する仕事に充てています」