企業の機密情報を狙うスパイは、どのように動くのか。元警視庁公安部外事課の勝丸円覚さんは「今も昔も、圧倒的に多いのは社内の人からの情報の抜き取りだ。中国は、国家ぐるみで情報活動への協力を国民に義務づけている」という――。(第2回)

※本稿は、勝丸円覚『産業スパイ対策の教科書』(日本能率協会マネジメントセンター)の一部を再編集したものです。

「不満を持つ従業員」は狙われやすい

Q 企業のなかで一番スパイに狙われやすいのはどんな人?


A 「不満を持つ従業員」が、ターゲットにされやすい!

「高度」な手口より、今も昔も圧倒的に多いのは、実は社内の人からの情報抜き取りである。在職している場合もあれば、退職者の場合もあるが、在職している場合には次の4つが主な対象になる。

【1悪意のある従業員】

金銭や異性関係など、自分の利益のために会社を裏切るパターン。経済的に依存させるのは、スパイの基本手段のひとつだ。そのために、借金があるかとか、ギャンブル好きかとかいった情報が集められ、利用される。

【2不注意な従業員】

飲食中に機密情報を話したり、パソコンの画面をつけっぱなしにして長時間離席したりする人である。ソーシャルエンジニアリングの標的にされやすい。

【3不満を持つ従業員】

会社に不満を持っている従業員は、敵対的企業からすると格好のターゲットだ。会社に復讐心を持ちながらも、退職日まで在籍しているといった場合には、情報の持ち出しへと誘導するのは容易である。

【4不注意な第三者】

社内からではないが、契約先や協業先などから情報が漏れることもある。社内での情報管理体制はしっかりしていても、業務委託先ではゆるかったりする場合は要注意だ。

PCの「出しっぱなし」は厳禁

2や4のパターンは、情報の盗み出しに気づきにくく、立件が難しいので要注意だ。たとえば、コワーキングスペースなどでPCをつけっぱなしにしてトイレに行った隙に、スマホで画面をパシャっと撮影されてたら、おそらくスパイ行為に気づくのは至難の業だろう。

カフェのテーブルの上にノートパソコンとマグカップ
写真=iStock.com/canart7
※写真はイメージです

いわゆる「ハニートラップ」との組み合わせもある。関係が発展して同棲などの状況になっていれば、不在時にPCをのぞき込むことも可能だし、会社の共有データへのパスワードを付箋やメモに書き込みPCに貼っていたら、「アクセスしてください」と言っているようなものだ。

日本では考えにくいが、ホテルの従業員にカネをつかませて部屋に侵入させ、データを撮影する、ということなども海外では珍しい話ではない。わたしは、国内外問わず、ホテルに滞在する際にはPCは絶対に出しっぱなしにせず、外出時には携行するか、鍵のかかるスーツケースに保管するように、企業への研修などで強調している。

<誰でも標的になりうると自覚しよう。まずはPC管理やパスワードの取り扱いなど基本の徹底が大事だ。>