海を眺めずに働くのはもったいない

横浜赤レンガ倉庫は約110年前、国の保税倉庫として建設されました。2002年に文化・商業施設として改修され二十余年、大おおさん橋やベイブリッジを一望できる横浜のシンボル的な存在として、多くのお客様を迎え賑わっています。

私は昨年12月に社長に就任しました。就任前は不動産開発に携わり、大手町(東京)や梅田(大阪)などで働いてきましたが、横浜に来て感動したのは目の前に海が広がり、心地よい風の吹く職場環境です。

住まいも近くに構えましたので、朝の過ごし方にもずいぶん余裕が生まれました。午前5〜6時に起きるとすぐ近くにあるジムに行き、ランニングマシンで汗を流してから出勤します。去年まで通勤電車に揺られていた時間が、そのまま健康管理の時間に置きかわりました。会社の始業は午前10時ですが、8時前後には職場の近くに来ています。すぐにはオフィスに入らず、20分くらいはこうして海を眺めています。こんなに素晴らしい景色を見ずにすぐに仕事を始めたら、もったいないじゃないですか。

大きな空に流れる雲、日によって異なる海の色、海上を行き交う船舶、ベイブリッジを走る車、みなとみらい21地区のユニークなビル群や観覧車――こんな景色を眺めていると、自分が抱えている仕事上の困難やストレスが、いかにちっぽけであるかを実感します。一貫して不動産開発にかかわってきた私は、施設運営ではある意味素人。それでも「素人だからこそ新鮮な提案をしよう」と前向きな気持ちになれるのです。

大さん橋に大型豪華客船の姿があると、いっそう気分が上がります。横浜港は日本有数の寄港地で、時には全長300メートル・総トン数17万トンを超える超大型船もやってきます。巨大で優雅な船から国際色豊かな乗客の方々が降りてこられるのを見ると、今日は何人のお客様をお迎えできるだろうかとワクワクします。

私たちは昨年、過去最高となる年間来場者数約810万人を記録しました。コロナ禍後の反動増もあったとはいえ、企業としてはこの数字を超えていかねばなりません。それにはあの手この手の「しかけ」が必要です。広い視点から物事を考えるうえでも、横浜の海を眺める朝の20分間はかけがえのないひとときになっています。

横浜をつなぐ4施設で9日間で20万人を集客

社長に就任して以降、地元の方々とお話をさせていただく機会が多くありました。そのたびに感じるのは、皆さんのヨコハマ愛の強さです。その中で多くの方々が赤レンガ倉庫に思い入れをもってくださっている。責任の重さに背筋が伸びる思いです。

地元の方々によれば、この辺りは80年代まで治安が悪く「近づいてはいけない場所」だったそうです。ドラマ『あぶない刑事』(1986年)の撮影でたびたび使われていましたが、録画を見ると確かに落書きが目立ち、不穏な雰囲気が漂っています。再開発によってこれだけ多くの人々が集い、楽しめる平和な場所になったのは、行政と地元企業と横浜の皆さんの努力の賜物です。

地元企業の方々には「街の賑わいをつくってほしい」と期待を寄せていただいています。そのために歴史的な外観はそのままに、訪れた方に「いつ来ても新しい」「いつも何か楽しい催しをやっている」と思っていただける運営をしていきたい。

お客様の多くは、中華街でグルメを楽しみ、象の鼻パークを散策しながら赤レンガ倉庫を訪れ、桜木町やみなとみらい方面へと各所を回遊されます。ルート全体で賑わいをつくっていく試みとして、7月には赤レンガ倉庫、MARINE&WALK YOKOHAMA、横浜ハンマーヘッド、DREAM DOOR YOKOHAMA HAMMERHEADの4施設を結ぶ水際プロムナードにマルシェを並べ、計9日間で20万人超のお客様に来場いただきました。

(構成=渡辺一朗 撮影=宇佐美雅浩)

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