最初の10秒で掴めなければダメ

といって、闇雲にプランを羅列すればいいというものではない。三木氏は、その初歩となる「絶対的な鉄則」として、「最初に一言で結論を書け、といわれます」と話し、ソフトバンクのホームページから閲覧できる08年3月期決算説明会のスライド資料を例にとった。

「最初のスライドに『モバイルインターネットを制する者がインターネットを制する』『アジアを制する者が世界を制する』と強いメッセージが出てきます。普通の会社だと、業績の概要や売上高、営業利益などを説明しだすのに、孫社長は、まず最初に、自分のビジョンや結論を強く、しかもコンパクトに打ち出します」

社内のプレゼンや稟議でも同様で、「最初の10秒でめなければ、もうだめ。あとの話は聴いてもらえません」という。三木氏の解説は、「孫社長には『(相手に)右脳で考えさせなければならない』という持論があります」と続いた。

脳の機能の科学的な解析については諸説があり、専門家の間でも意見の分かれるところだが、一般的に、右脳は視聴覚イメージや芸術的感性を、左脳は言語や論理的思考を司るとされている。したがって、論理的に文章や数字で説明するときには左脳に訴えかけることになるのだが、孫氏の場合はそうでないらしい。

「人間は、論理で説得されるよりも、感情に訴えかけられるほうが、絶対にやる気が出る、ということなんです。ロジックで相手を説得するのは悪いことではないけれど、大きなビジョンや将来像を訴えかけるには、論理で展開するのではなく、感情に訴えかける。感情に訴えるには、図やグラフで見せて、右脳に働きかけなければならない、ということです」