ただ、これらの要因がサラリーマンの心に直接、影を落としているのではない。不安の原因としてもっとも大きいのは、頼りにならない社会保障制度だろう。
平成24年度まで、厚生年金の報酬比例部分の受給開始年齢は60歳だった。しかし、男性は平成25年度から段階的に引き上げられ(女性は平成30年度から)、いずれは受給開始年齢が65歳になる。受給開始年齢の引き上げは、おそらくここで止まらないだろう。
アメリカとドイツは2050年までに67歳への引き上げを予定し、イギリスは2030年代半ばに68歳、2040年代に69歳に引き上げる方針だ。日本はそれらの国より高齢者の割合が多いのだから、さらなる引き上げは避けられない。
サラリーマンの不安の一端は、ここにある。はたして自分は何歳まで働くことができるのか。自分にその気があっても、会社は自分を必要としてくれるのか。もし会社と折り合わず辞めてしまうとしたら、60代で再就職ができるのか……。
こうした不安は、アベノミクスでは解消されない。だから景気回復のニュースを聞いても心が晴れないのだ。
社会保障制度がこのありさまなので、いまの現役世代は、70歳くらいまで第一線で活躍することを目指さなくてはいけない。となるとキャリアの設計も、60歳でリタイアできた時代とは違う戦略が必要になってくるだろう。
目先の景気回復に一喜一憂するのもいいが、これからはそれだけではいけない。将来を見据えてどのようなキャリアを描き、具体的に“いま”何をすべきなのか。2014年は、そのことをしっかり考える1年にしていただきたい。
(ジャーナリスト 村上 敬=文・構成)