円安が追い風となった「国産シフト」
だが2020年代に入り、潮目が変わりつつある。
中国国内での人件費の急騰、さらに歴史的な円安により中国産ネギの調達コストが上昇。消費者の国産志向の高まりを受け、農林水産省も2024年から「国産野菜シェア奪還プロジェクト」を立ち上げるなど、外食・業務用市場における「国産回帰」が高まっている。
「中国産ネギのシェアを奪還し、国内自給率を100%にする」。この大きな課題に対し、ねぎびとカンパニー代表の清水寅さんは「単なる感情論や安売り合戦で挑んでも外食産業の原価率の壁には勝てない。まずは農家が再生産できる適正価格で安定して利益を出せる流通インフラを構築することが先決だ」と行動を起こした。
農作物は「まとめ買い」の方が高くなる
30歳で脱サラし、山形県天童市で農業をスタートさせた清水さん。順調に栽培面積を広げたものの、全国的な大豊作による市場価格の暴落に直面する。
全国の取引価格を調べると、地元産が1ケース900円、青森県十和田市産は1.7倍の1500円で取引されている事に気づく。理由を確かめるべく十和田へ車を走らせた清水さんが目にした答えこそ、「物量は力なり」という流通の真理であった。
「清涼飲料水なら1本より1ダースで買うほうが安くなるのが世間の常識です。ところが農産物の世界は真逆で、まとめ買いのほうが高くなるんです」
大手外食チェーンやスーパーが最も恐れるのは「欠品」である。同じ品質の長ネギを年間を通じて大量かつ確実に供給できる産地に対しては、買い手は欠品リスクや相場高騰のリスクを避けるため、市場の平均価格よりも高い水準であっても、年間を通じた固定価格での「契約」を結んでくれるのだ。
個々の小規模農家がバラバラに市場へ出荷していては、価格交渉力を持ちにくい。「作物の出来や原価と無関係に価格が決まる市場に依存していては未来がない。物量を自社で束ね、市場を通さずにスーパーや実需者と直接契約を結ぶ」。のちの葱出荷組合創設への種となった。

