「俺が売るわ」出荷組合が生まれたワケ

「最初は出荷組合を作るつもりなんてありませんでした」と清水さんは明かす。

2014年に「ねぎびとカンパニー」を設立し、「初代葱師」を名乗り始めた清水さん。2015年には糖度19.5度、2017年には21.6度を誇るブランドネギを生み出し、さらに2019年に300万本から最高品質の3本を選抜する1本1万円の超高級ネギ「モナリザ」を発表して話題となった。同年に山形県ベストアグリ賞・農林水産大臣賞を受賞し、2020年には著書『なぜネギ1本が1万円で売れるのか?』(講談社)を刊行するなど、注目を集める存在となっていた。

全国から栽培技術を学びたいという声が寄せられ、自らの失敗と実験から導き出した栽培技術を各地で指導して回った。「勉強になった」「品質が上がった」と各地で評判を呼ぶ中、技術を学んだ全国の若手農家たちから切実な悲鳴が上がってきた。

「清水さん、技術が上がっていいネギが作れるようになったけれど、売る場所がないんです。自分の地域じゃ安く叩かれてしまう。俺のネギも売ってくれないか?」

当時は自社の分だけで手一杯だった清水さんは、「なんで俺が人のネギの売り先まで探さなきゃいけないんだ。めんどくさいな」と最初は断っていたという。しかし、全国の現場を回る中で、天候不順や相場暴落に怯え、手塩にかけて育てた長ネギが安値で買いたたかれて困り果てる若手農家たちのリアルな顔を見るうちに、気持ちが変わった。

「分かった、じゃあ俺が売るわ」

こうして2021年11月に創立されたのが、「葱出荷組合zero(以下、zero)」である。従来、各地の農協や農家は「自分の地域の利益」を優先し、技術の囲い込みや他産地との牽制を繰り返してきた。しかし「zero」は、その垣根を撤廃。全国約150社・作付面積250ヘクタールがチームで動いている。

流通の仕組みはシンプルだ。参画農家は収穫し皮剥きしたネギを「コンテナに詰めて各地域の集荷拠点へ持ち込む」。拠点に持ち込まれたネギをzero本部(ねぎびとカンパニー)が定額で買い上げ、地域のzeroリーダーが必要に応じて袋詰め・選別・結束などを行い、大手スーパーや外食企業へ供給する。

「葱出荷組合zero」のメンバー
写真提供=ねぎひとカンパニー
「葱出荷組合zero」のメンバー

技術と経営の両輪を支える4つの仕組み

なぜ、全国の若手農家から支持を集めているのか。理由は、単なる「販売代行」にとどまらない、技術と経営の両輪を支える4つの仕組みにある。

1.技術指導と栽培ノウハウの共有

高く売る仕組みがあっても、畑での収穫量や品質が低ければ売上には繋がらない。清水さん自らが全国の圃場を回り、試行錯誤から導き出した栽培方法を共有。各産地にあった栽培を提案・実施することで、参画農家の技術力を引き上げる。

2.全量買い取り契約と最低価格保証

「zero」では、市場に頼らず、量販店や工場などと直接契約を締結。買い取り価格(最低価格保証あり)を予め設定し、全量を買い取ることで、市場暴落時でも農家が次も安心して作付けできる環境を提供する。

3.「欠品率ゼロ」の通年安定供給

単一産地では台風や豪雨、病害により出荷がストップするリスクがある。しかし「zero」は全国13〜14カ所の拠点ネットワーク(函館、山形、茨城、埼玉など)を連携させ、産地間で天候リスクを相互補完。年間を通じて「欠品率ゼロ」の安定供給網を構築した。

4.出荷・選別作業の代行

農家が出荷にあたって人件費と手間を奪われるのが、箱詰めや選別・結束といった出荷調整。「zero」では高額な選別機やピッキング機器を本部が一括調達・購入し、各拠点へ配備。農家は畑で収穫し皮剥きしたネギをコンテナに詰めて出すだけで済み、面倒な出荷作業から解放されて生産拡大に集中できる環境を完備している。