「法の正義」が通用しなくなる怖さ
当然のことながら、制裁はICCに暗い影を落としています。今のところ対象として指名されているのはカーン検察官だけですが、次は誰がターゲットにされるかわからない。
たとえば、第二副所長のアラピニ判事は、予審第一部にいて、パレスチナの事態を担当していますので、指名される可能性は十分にある。もちろん、所長の私もです。スタッフの誰もが、常に制裁のことを意識しながら仕事をしている現状があります(編集部註:2025年6月書籍発売時の記述)。
日本がICCを守らないのはなぜか
日本を含め、締約国の動きが鈍いことは本当に遺憾です。大国が思うがままに行動し、ICCをつぶすようなことを許してしまえば、国際社会における「法の支配」は崩壊してしまう可能性が高い。それだけの危機にあるという認識が、締約国の間できちんと共有されていないと感じます。
ICCが誕生するまでの過程には、先人たちの多大な苦労がありました。第二次世界大戦終結後、長い時間をかけて機運を高め、法的な環境整備を進め、多くの国による困難な交渉を経て、1998年にようやく設立が合意されたのです。ICCが消滅してしまった場合、もう一度同じような苦労を重ねて、改めて常設の国際的な刑事法廷を設置することができるでしょうか。現在の国際情勢を見れば、それは不可能だと思います。
だからこそ、私たちはどうしても存続していかなくてはならない。締約国には、引き続き支援を呼び掛けていくつもりです。
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