任期中の逮捕状発付の可能性もある
もっとも、立候補しても当選するとは限らないので、どこかモヤモヤとした心境ではありました。それに、ウクライナやパレスチナをめぐる捜査が続く中、もし当選すれば、任期中に逮捕状の発付などがあるかもしれず、政治的な動きに翻弄されるだろうと予想もしていた。とても明るい気持ちにはなれませんでした。
立候補を決意したあと、日本の外務省に事前の報告をしました。外務省の方は、「ぜひやってほしい。そうやって勇気を持って挑戦するのは大事なことだ」と励ましてくださった。私は、「これならば、きっと困難なときにも支えてくれるだろう」と思いました。
裁判官の仕事は続けつつ所長の職務も
2024年3月11日、私は選挙で当選を果たし、この日をもってICCの所長に就任しました。
所長に就任したことで予審の仕事からは離れることになりましたが、所長は上訴審部の裁判官も兼務することになっているので、この役割も新たに加わった。ただ、裁判官としての仕事はもはや全体の一部で、所長には他にやるべきことが山のようにあるのです。
まず、組織運営にまつわる仕事があります。年1回の締約国会議に向けて予算請求の準備をするなど、様々なことをやらなくてはいけない。諸々の決定は、所長と第一副所長、第二副所長の計三名で構成される裁判所長会議で話し合って結論を出します。決めるべきことが本当にたくさんあるので、年中、3人で会議ばかりやっている。ちなみに、副所長の2人は、私と同じく裁判官の互選によって選ばれています。
土日も仕事するのが当たり前に
さらに、所長には対外的な仕事が数多くあります。たとえば、ハーグに各国の大使など要人が来た際の応対。国連へ報告に行くこともあるし、何か解決しなければならない問題が生じたときには、締約国にお願いをしに行くこともある。
こうした仕事が全体の8割から9割くらいを占めるようになっても、裁判官としての仕事も手を抜くわけにはいきませんから、とにかく忙しい。所長になってからは、だいたい土曜日、日曜日も仕事をするようになりました。それまでは、金曜日の夜に自宅に戻れば「ああ、今週も終わった」と一息つけていたのが、そうもいかなくなった。エンドレスに働き続ける状態になってしまったのです。

