ICC裁判所長の「3A」の結束力
激務の中、一つ心強いのは、裁判所長会議のチームワークが良好なことです。
第一副所長は、盟友とも言うべきアイタラ判事。彼が副所長に就任してくれたのは、私にとって大きかった。そして第二副所長は、ベナン出身のレイニー・アラピニ=ガンソー判事。彼女は、ICCの裁判官になる前は、人権派の弁護士としてアフリカ各地で活躍していました。「肝っ玉母さん」みたいな素敵な人です。予審第一部に所属していて、私とは別の予審部でしたが、同じ予審部門を経験しているので何かとスムーズに話ができる。3人とも名字がAで始まるので、「3A」と称しています。
同僚とグチを言い合えるのが救い
所長会議では、非常に微妙な判断を迫られることがあります。たとえば、予審各部の3名のメンバーや、公判を担当する裁判官3名の合議体に誰と誰を指名するかを決めなくてはいけない。各人の経験などを踏まえてバランスを考えて決めていくわけですが、私たち3人の意思疎通がしっかりできているので、適切な判断ができているように思います。
アイタラ判事とは、過去に一緒に担当した事件の詳細に踏み込んだ雑談をして、グチを言い合えるのもありがたいところです。予審第二部の頃からずっと一緒に仕事をしているので、「あのときはこうだった」「あれには腹が立った」みたいな話ができる。秘密を守らなくてはいけないため、他の人が相手だとこうはいきません。いろいろと抱えこんでストレスが溜まりがちな日々の中で、彼との会話は癒しになっています。
アラピニ判事の陽気さにも助けられています。私が辛いときに、ブツブツと文句を言っていたりすると、フランス語圏出身の彼女は「セラヴィ(それが人生さ)」と声をかけてくれる。なんだかホッとします。
所長就任10カ月後、トランプが再び大統領に
2025年に入ると、一気に事態が動きました。1月3日、共和党の議員がICCに対する制裁法案を下院に提出。前年に審議された法案とほぼ同様の内容です。提出から6日後の1月9日、下院で可決。1月20日にはトランプ氏が大統領に就任します。
1月28日、民主党の議員の多くが採決へ進むことに反対したため、上院での法案の審議はストップしました。しかし、反対に回った民主党の議員たちの間にも、ICCに対する反感は共有されていた。そして2月6日、トランプ氏はICCの職員や関係者への制裁を可能にする大統領令に署名します。


