航空業界が「痩せ薬」で得をするワケ
――この変化を企業はどのように受け止めているのでしょうか。
【金子】企業レベルでも、インクレチン関連薬の普及による変化が意識され始めていると考えて問題ないと思います。例えばペプシコの北米食品事業では、2026年第2四半期の売上高が前年同期比で2%減少しています。
この売上減少がすべてインクレチン関連薬に起因するのかは、なかなか断定できません。ただ、ある調査では、生活費の上昇や健康志向と並んで、インクレチン関連薬の普及も背景要因としてあるのではないかと指摘されています。
これと関連するように、決算説明会でインクレチン関連薬に言及した食品関連企業は、2024年にはわずか5社だったのが、2026年には36社へと増えています。企業側もこの変化を確実に見ているのではないかと考えています。
続いて得する側として、少し意外な影響先に航空業界があります。航空機は、搭載する重量が軽いほど燃料の消費量が少なくなります。そのため、荷物だけでなく、乗客の平均体重が下がっても燃料費の削減につながることが知られています。
アパレルが抱える約50億ドルの在庫リスク
――痩せ薬の使用で体重が10%減るとすれば、乗客1人で5キロ、10キロという単位で減ることになります。何百人も乗る飛行機では、影響は大きいのではないでしょうか。
【金子】おっしゃる通りです。実際、投資銀行が試算しており、アメリカの大手航空会社4社で年間合計約5.8億ドルの燃料費を削減できる可能性があると指摘されています。
これまで航空会社は、座席や備品を軽くするのはもちろん、軽量化のために機内誌の紙を薄くするなど、非常に細かな努力を積み重ねてきました。
そう考えると、乗客全体の平均体重が変わる可能性が、航空業界にとって無視できない要因であることは想像に難くないと思います。最近は特に燃料費の高騰などもあるので、その点でも影響度は無視できないと考えています。
続いて、どちらとも言えない領域としては、アパレルと外食が挙げられます。
まずアパレルでは、インクレチン関連薬の使用によって体型が短期間で大きく変わります。そうすると、これまで売れていた衣料品のサイズ構成が、需要と合わなくなっていくことが挙げられます。
試算では、現在のインクレチン関連薬の使用傾向が続くと、2027年までに約4億着が需要と合わなくなり、50億ドルほどの在庫リスクが生じる可能性があると言われています。ラージサイズがS、Mサイズに変わっていくという点が挙げられていました。

