5年で市場規模はおよそ2倍に
【金子】金額で見た市場規模についても、複数の市場調査機関の推計を我々でまとめました。その結果、2025年は世界でおよそ610億ドル、2030年には1250億ドルとなる見込みです。
市場調査機関によって数字に幅はありますが、5年間でおよそ2倍という方向性はほぼ共通しています。
日本でも、2026年4〜6月期の国内医療用医薬品の売上高ランキングでマンジャロが2位に位置しており、売上高は前年同期比で実に120%も増加していました。他の薬剤の伸び率が数%から20%程度であるなか、文字通り桁違いの伸びが確認されています。
――数年前には、痩せることを目的に買う人が増え、糖尿病の治療に回らないといった状況もあったかと記憶しています。こうした問題は今どうなっているのでしょうか。
【金子】現在、米国ではおおむね解消されています。この薬は、痩せ薬として注目されたことによる需要の増加だけでなく、供給サイドでもそもそも製造が難しいという課題がありました。
当時は、需要の急増に対してすぐに生産量を増やすのが難しいという問題に直面していました。その後、製薬各社の投資によって生産量はかなり増えており、米国でも局所的な不足はあり得るものの、全体では供給はかなり安定していると言って差し支えないと思います。
ポテチの消費量が減る一方で…
――インクレチン関連薬は、単なる痩せ薬を超えてさまざまな産業に影響を与えているといいます。どのような産業に、どんな影響が出ているのでしょうか。
【金子】まず損する側として、一番わかりやすく影響があらわれているのは食品業界だと考えられます。実際に研究データもあります。
アメリカの約15万世帯の消費者パネルから、インクレチン関連薬の利用世帯を含む2万2000世帯以上の実際の購買記録を分析した研究です。
この研究では、薬の使用開始から6カ月以内に家庭の食料品支出が平均5.3%減少し、高所得世帯では実に8.2%と、より顕著な減少が見られました。
品目別に見ると、塩味のスナック菓子が10.1%減少するなど、いわゆる高カロリー・高糖質の加工食品で支出の落ち込みが大きいことが確認されています。一方で、この調査の対象になった食品の中で有意な増加が確認されたのは、ヨーグルトだけでした。
つまり大きな方向性としては、食べる総量は減っているものの、少ない量でもタンパク質などの栄養を摂りやすい食品へ支出を移している可能性があると思います。


