「朝から家系」はブルーオーシャンだった

正博さんの読みは当たり、客層は次第に広がった。

仕事に向かう人、夜勤明けの人、朝まで遊んでいた学生、休日の家族連れ――。

「朝ラーメンって、一番ラーメンから遠い時間帯に見えるんですけど、実際にはいろんな人が来ます」

4時間で10人だった店が、いまでは朝だけで約200人。むしろ朝の客がたま家の売り上げを支える屋台骨となった。

さらなる飛躍のきっかけになったのはYouTubeだった。

20周年のタイミングで、日曜日のオープンから1時間限定で朝ラーセットを390円で提供した。

「20周年だから390円。サンキューということで」

この企画が人気YouTubeチャンネル「黙飯」の目に留まった。動画が公開されると、一気に注目が集まった。

「そこが突破口になりました」

その後、次々とメディアから声がかかるようになった。

日本テレビの「news every.」、テレビ朝日の「朝メシまで。」などテレビにも登場。YouTubeからもさまざまな人気チャンネルが取材に訪れた。

「来ていただけるところは、ほとんど全部断らずに対応しました。とにかく店を知ってもらわないと、足を運んでもらえないので。でも最初はちょっと怖かったです。急にお客さんが増えるので」

それでも、店を支えたのは20年以上積み重ねてきた味だった。

多摩センターという場所で、朝7時から家系ラーメンを出す。それは結果的に、競争相手の少ない「ブルーオーシャン」だった。

週休2日、8時間営業で年商1億円に届くところまできた

いま「たま家」は朝7時から15時までに多い日で1日350人ほどが来店する。土日はさらに2割ほど増える。

ただし、その裏側は楽ではない。営業が終わってからもスープの仕込みは続き、正博さんは毎日深夜1時10分には店に入る。

「仕込みに5時間くらいかかるんです。終わった後も豚骨を入れて、そこからまた3時間くらいかける。この素になるスープがものすごく重要なんです」

現在はスタッフも増え、4人体制になった。それまで夫婦2人で店を回していた時代を考えれば、大きな変化だ。

正博さんの表情には以前のような焦りはない。そしていま、「たま家」は年商1億円を目指すところまで来た。

「8月は月商925万円でした。来期には、たぶんいけると思います」

目標は、週休2日、8時間営業で年商1億円。ラーメン店としては、決して小さな目標ではない。

「もう調子に乗らないです。支店を増やすつもりもないし高級車を次々と乗り換えるつもりもない。身の丈に合った生活をしようと思っています。今は、自分を支えてくれる子たちもいる。25年やってきて、今が一番楽しいです」