ライフの「二眼レフ」に三つ目の地域軸

ライフはこれまで、首都圏と近畿圏という二つの巨大市場を主戦場としてきた。一般的な食品スーパーが一つの地域から周辺へ商勢圏を広げるのに対し、ライフは東京圏と大阪圏という離れた二つの市場で店舗網を築いてきた。

いわば「二眼レフ」の経営だ。そこにアルビスが加わる。アルビスは北陸だけのスーパーではない。すでに中京圏へ店舗を出している。

もちろん、今回の買収を足掛かりとして、ライフが愛知県や岐阜県へ「ライフ」を大量出店すると発表したわけではない。しかし、「首都圏―北陸・中京圏―近畿圏」という広域展開への選択肢を持つことになる。

自前で新しい市場へ一店舗ずつ出店するには、土地を探し、店舗を建て、人を採用し、物流網を整えなければならない。いまは建設費も人件費も上がっている。

だったら、その地域ですでに店舗、人材、顧客、仕入れ先、物流網を持つ企業を買った方が速い。M&Aとは企業を買うだけではない。市場へ参入するまでの「時間」を買うことでもある。

なぜアルビスの看板を残すのか

最近のスーパー再編には、もう一つ特徴がある。買収した会社を、自社ブランドへ全部塗り替えようとしないことだ。

これは食品スーパーという業態を考えれば合理的だ。スーパーは極めて地域性が強い。同じ魚でも、地域によって売れる種類やサイズが違う。総菜の味付けも違う。年末年始や盆などの食文化も違う。

長年その地域で営業してきたスーパーには、大手が簡単にはつくれない顧客との関係がある。だから看板まで消してしまう必要はない。商品や売場づくりでは地域スーパーの強みを残す。一方、商品調達、物流、システム、決済、AI、人材育成など、規模を生かせる部分はグループで共有する。

つまり、「会社を消す統合」ではなく、「個性を残して機能を束ねる統合」へと変わってきた。

埼玉の雄ヤオコーも「飛び地」浜松へ

この動きを先取りしているのが、ヤオコーを中核とするブルーゾーンホールディングスだ。ヤオコーは埼玉県を中心とした関東の優良スーパーとして知られてきた。しかし現在のグループには、エイヴイ、せんどう、フーコット、文化堂などが加わっている。

さらに注目されるのが、愛知県東三河から静岡県浜松周辺に「クックマート」を展開するデライトホールディングスだ。埼玉を地盤とするヤオコーから見れば、愛知・静岡は「隣」ではない。

ライフ―アルビス。ブルーゾーンHD―クックマート。共通するのは、既存商勢圏から離れた場所にある強い企業を取り込んでいることだ。食品スーパー再編の「地理」が変わっている。