大前研一「リニアは失敗する」
『プレジデント』に掲載された大前氏の「日本のカラクリ」と題する連載コラムでは、いくら未着工だった静岡工区の着工ができても、3つの理由でJR東海のリニアは失敗すると主張している。
1つ目の理由に、「南アルプスルート」の選択を挙げた。
大前氏は「南アルプスの下、岩盤の厚さが最大1400メートルに達するリニア工事では、想定以上の大破砕帯に当たる可能性がある。難工事になるほど事故のリスクは高まる。作業員の命に関わるリスクを背負ってまでやるべき工事なのか」などと疑問を呈している。
直線で総距離が短い南アルプスルートは、総工費が抑えられ、名古屋に早く到着できる経済性メリットを重視した選択だった。
ところが、南アルプスルートを選んだため、静岡で工事が止まり、資材や労務費が高騰したことなどで、「当初計画では総工費約5.5兆円だったが、2025年の見直しで約11兆円に膨らんだ」と分析している。
その上で大前氏は「民間事業だから自業自得、では済まない。建設資金のうち3兆円は国の財政投融資から借り入れだ。リニアで失敗すれば、返済が滞るリスクがあり、国民はすでに巻き込まれている」と指摘している。
「各駅停車のリニアでは所要時間の短縮は10分だけ」
大前氏の挙げる2つ目の理由は、リニアの最大の売り物である「所要時間」だ。
リニアは品川―名古屋間を最速40分で結ぶとしているが、これは途中駅に停車しない場合の話であり、何本かに1本の列車は神奈川、山梨、長野、岐阜の4県に各駅停車しなくてはならない。その場合、1時間強はかかるという。
JR東海は品川駅での乗り換えを最短3分と想定しているが、大前氏によると、東京駅から品川駅まで約10分、品川駅からリニアホームまで約10分かかり、それらを合わせると東海道新幹線のぞみとの差は10分程度だという。
大前氏は「リニアの時間の優位性が大きく開くのは大阪まで延伸してからだが、名古屋以西は駅の位置すら固まっておらず、社長自ら新大阪駅につなぐ工事は難度が高いと言っている」などとして、「名古屋開業までのリニアに大きな時間短縮の期待をかけることは難しい」と説明する。

