国がJR東海に貸し付けた3兆円の「メッセージ」
しかし、財政投融資による3兆円の貸付がそれを許してくれなくなった。
財政投融資は、政府が国債の一種である財投債の発行で調達した資金であり、それもJR東海への貸付は「無担保」「30年間元本の返済猶予」「平均金利0.8%の低利」と三拍子そろって破格に優遇されたものである。
もともとJR東海は2027年に品川―名古屋間が部分開業をすると、長期債務残高が健全経営の危険レベルとなる「5兆円」に達すると見込んでいた。
2027年に名古屋までの部分開業をしたあと、8年間はリニア工事を一時中断して、東海道新幹線で稼ぎ出す営業キャッシュフローを借金返済に充てる期間と考えていた。
その8年間は、健全経営の危険レベルに達した5兆円の借金を半分の2.5兆円くらいまでに削減する期間となる。2035年になってから名古屋以西の工事を再開して、10年間の工事を経て、大阪開業は2045年にすると計画していた。
しかし、そこにあらかじめ3兆円という政府融資が入ってくれば、8年間の営業キャッシュフローによる借金返済期間は不要となる。当然、リニア工事の一時中断もなくなるわけだ。
3兆円で、大阪開業を当初計画の2045年から2037年に前倒しさせることになったのだ。
政府側からすれば、3兆円もの特別優遇の資金援助をするのだから、JR東海に8年前倒しをさせ、必ず2037年に大阪開業させよと尻を叩いたことになる。8年前倒しは、政府とJR東海との約束となったのである。
名古屋までの開業ですらアップアップの状態
2037年の大阪開業は政府との約束となったから、JR東海は2027年名古屋までの部分開業を簡単に延期できなくなった。
葛西氏が言っていた、「中断することがあっても100点満点」などという甘い考えは許されなくなった。
「2027年開業は単なる目標」という理屈は通らなくなり、「工事費の増大」や「難工事等による工事遅延」があれば、一時中断して延期すればいいという選択肢はなくなった。
政府は静岡県の反対などでリニア工事が遅れていることを承知していたから、名古屋までの開業前に、名古屋以西の工事計画づくりをJR東海に迫った。
丹羽社長は「名古屋開業以前に、大阪までの工事に着手することは財務面や工事の遂行能力などを踏まえると不可能」と退けている。
政府に対して、JR東海は民間企業の「経営の自由」の原則を盾にしているが、実のところ、いまや名古屋までの開業ですらアップアップの状態なのである。
