3.子ども手当はバウチャー支給に
子ども手当の制度は、すぐに見直すべきだ。子ども手当は、10年度に中学生以下の子ども1人あたり1カ月1万3000円を給付し始めた。
ここまではマニフェスト通りだったが11年度からは倍額の2万6000円支給するという公約は実現しなかった。
そもそも、この政策は高額の税金を投入しているわりに評判が悪い。最初の支給は10年6月。参院選の1カ月前で野党側からは「選挙買収」との批判も受けたが、参院選は民主党の大敗。
「子ども手当効果」は乏しかった。政策面でも少子化対策、子育て支援、景気対策の起爆剤となっているという兆候は見えない。
ここで提唱したいのは、手当のバウチャー化。つまり現金支給ではなく同額の「商品券」を支給するのだ。ただし使途は学習塾、書籍、文具、育児用品など教育・子育てに限定する。
この制度が不人気なのは、手当をもらえない人の理解が進んでいないからだ。「社会全体で子どもを育てる」という理念はわかるが「母親のパチンコ代に化けた」という話を聞くと、ムダな出費に見える。使途限定のバウチャー化は、その批判への回答になる。
バウチャーの使用を、居住の市町村域内に限定する手もある。そうすれば、カネは地元に落ちる。「バウチャーを利用すればさらに割引」などの付加サービスを商店街ごとにつけて競えば地域振興になる。
バウチャーに使用期限をつければ、高所得の家庭は利用を控えるかもしれない。何%かの家庭が利用しなければ、結果としてその分は国庫に戻り、貴重な財源となる。
4.霞が関のゼロベース再編
09年のマニフェストの主要項目に挙げられながらいまだ進捗せず、話題にもなっていないテーマがある。政権構想の基本となる「五原則、五策」の中の「国家行政組織法を改正し、省庁編成を機動的に行える体制を構築する」という項目だ。
省庁を再編したり改廃するためには、同法を改正し各省庁の設置法を改廃しなければならない。その「縛り」が政治主導を阻んでいる。
民主党は自分たちの原点に戻るべきだ。必要な法改正を行って、極端なことをいえば一夜にして省庁再編できるようにするのだ。
もちろん全省庁を一気に再編するのは現実的ではない。だが、厚生労働省、文部科学省の関係部門を切り離して「スポーツ省」「こども省」などを新設するのはどうか。「スポーツ省」は、精鋭を育てて五輪メダリストを育成するだけでなく、障害者を含めた草の根の取り組みを支援する。現在は五輪は文科省所管だがパラリンピックは厚労省所管。誰が考えても首をかしげる省庁縦割りは、是正すればいい。幼稚園・保育園を一元化して「子ども園」をつくる議論が進む今、未就学児童を担当する省庁が2つに分かれていることもナンセンスだ。
省益を重視する官僚にとって、省庁再編は、最も避けたい展開。抵抗は激しいだろう。だが、いったん法改正してしまえば、逆に政治と官僚の関係が「政治優位」で確定する。
国会がねじれ状態の中、法改正は難しいが、民主党よりも過激な「政と官」の改革を志向するみんなの党あたりと共闘を組むことは不可能ではない。結果として政権基盤の強化も期待できる。
省庁再編の終着駅は、財務省の解体。主計部門を切り離して首相官邸に持ち込み国家戦略局(現在は国家戦略室)と合体させれば、政治主導が完成する。
※すべて雑誌掲載当時