国外で取引されなくなったルーブル

2022年2月、ロシアはウクライナに軍事侵攻を仕掛けた。その後、欧米日といった主要国が矢継ぎ早にロシアに対して経済・金融制裁を強化した。その結果、ロシアの通貨ルーブルは大暴落したが、直後にロシア中銀が大幅な利上げをしたことや、国際原油価格の急騰で貿易黒字が急増したことから、相場は「V字反転」するに至った(図表1)。

その後もルーブルの為替レートは振幅を伴って推移してきたが、2025年中頃を底にルーブル高トレンドが定着している。軍需の牽引を受けたロシア経済は2023年と2024年の成長率が4%台に乗るなど好調だったが、それが剥落した2025年以降、低迷が顕著である。にもかかわらず、ルーブル高が定着しているのはパズルそのものだ。

【図表1】ルーブル相場

要するに、経済が弱いのにもかかわらず、ルーブル高が定着していることになる。その最大の理由は、ルーブルが国外で取引されなくなったことに尽きると考えられる。主要国による経済・金融制裁で、少なくとも主要国の大企業はロシアでの事業展開を見直さざるを得なくなった。その結果、国外でのルーブルの取引は激減したのである。

言い換えると、主要国の大企業や投資家がルーブルの取り扱いを手控えたことで、その為替レートは国内の通貨需給に強い影響を受けて形成されるようになったわけだ。ロシア中銀は物価と通貨の安定を図り、現金供給量を絞り込んでいる(図表2)。供給が絞り込まれた一方、国内では軍需産業を中心にルーブル需要が根強いままである。

さらに、ロシアは産油国であり、貿易黒字国でもある。そして輸出企業は、国外で得た外貨をルーブルに交換する必要がある。こうしたことから、ロシア経済が不調であるにもかかわらず、ルーブル高トレンドが定着するに至る。しかし、これは価格(price)の問題に過ぎず、ルーブルの通貨としての価値(value)は向上していない。

【図表2】ロシア中銀の通貨発行量

「信用に足らざる通貨」のまま

ルーブルの価値が向上していれば、ロシアはルーブルを使って国際間での貿易取引や金融取引を決済できる。しかしそれができないから、ロシアは中国の人民元や民間の米ドル建てのステーブルコイン、あるいは地金を用いて貿易決済を行っている。結局ルーブルは、国外だと依然として信用に足らざる通貨と認識されたままなのである。

とりわけ興味深いのは、ロシアが保有する地金を減らしていることだ。中銀の統計によれば、2026年に入ってロシアの金準備(政府が中銀の口座に保管する外貨準備としての金保有高)は減少基調で推移している(図表3)。推測の域を出ないものの、政府の金売りは貿易取引や金融取引の決済が目詰まりを起こしている可能性を物語る。

ロシアルーブル紙幣
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