中国や韓国には商店街組合がない

東アジア地域独特の夫婦についての考え、それが具体的に形となって表れた小商人の経営の仕方というものがあり、たとえばアングロサクソンの地域などとは違っている。その点では、東アジア諸国は共通する一つの文化圏にあるといえる。しかし、東アジアの中においても、子供が絡むと様相は違う。

前回、わが国の小商人においては、(1)家業承継と、(2)兼業経営による家族全体の維持への強い傾向があることを指摘した。この傾向は、先ほどの川の4艘の舟の話で言うと、まさに死ぬも生きるも一緒とばかりに、両親の舟に子供たちが乗り込んでくる話と共通する。

だが、日本以外の東アジアの小商人の考えは違う。中国の上海と長春と温州、韓国のソウルと釜山、そして台湾の台北の商店街や小売り市場を訪問して、そこのリーダーの商人たちにインタビューしてわかったことが2つある。

一つは、彼らは、子供たちに、店を継がせたくない、できれば子供たちには商売とは違った職業に就いてほしいと思っていること。もう一つは、自分たちが店を構えるそのまちに対して、まちづくり活動を含め、あまり再投資する気がないことである。

同じような文化圏にあって、同じように家族で商店を経営する彼らに対して、日本の商人に似た精神をきっともっていると思ってインタビューに臨んだが、答えは違っていた。もちろん、上海と長春のあいだには「商人たることのプライド」に差があるように思えたし、台湾の台北の商人たちは日本の商人に近い気持ちをもっているということはあったが、総じて言えば、日本の商人とは一線を画す上記の答えが支配的だった。