そんな状況に置かれた野口は、どんな小さなことでも喜んでやるよう心がけた。彼は自分から大学の医師や関係者に一人一人話しかけ、徐々に信頼を得られるよう過ごした。自分の能力を活かせる場から、自らが目標にしてきた世界に向けた仕事をすればいいと考えたのだった。

結局、それから野口は南カリフォルニア大学医学部の教授となり、退職後は名誉教授になった。法医学の世界でも、様々な学会で重要なポストを歴任してきた。

『ハリウッド検視ファイル:トーマス野口の遺言』(山田敏弘著・新潮社刊)

もちろん、どこまで行けば成功と見なすかは、個人によって違う。ただ野口は、「目標と信念さえ持っていれば、そこにはどんな遠回りをしても行ける。これだけは間違いない」と言う。

野口は現在87歳。今でも学会や講演などで世界を股にかけて精力的に活動し、大学で研究員として法医学分野で研究を続けている。そして現在、医療をめぐる法律問題を検討する世界医事法学会の会長を務めている。法医学に進むと決めた野口少年の目標は達成されている。

100歳まで現役を貫くと走り続ける野口のバイタリティはまだまだ衰えることはなさそうだ。

トーマス・T・野口
1927年福岡生まれ。1951年に日本医科大学を卒業、ローマリンダ大学を経て、1967年にロサンゼルス地区検視局長。全米監察医協会会長などを歴任し、検視局長時代から、南カリフォルニア大学、ローマリンダ大学で法病理学の講師を務める。1982年から南カリフォルニア大学で法病理学と死因捜査の教鞭を執り、1999年から南カリフォルニア大学法病理学名誉教授。現在、米医事法学会の理事会員、世界医事法学会会長、全米監察医協会国際関係委員会委員長、米科学捜査アカデミー国際関係委員など。
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