「売却代金」を得られるが、「家賃支払い」が必要
リースバックで自宅を売却すると、その日から家の所有権を手放し、賃借人になります。まとまったお金を得て、固定資産税などの費用負担から離れられる一方で、今度は毎月の家賃を払い続けなければなりません。
家賃は不動産会社が設定します。固定資産税などの支払いが不要になる一方、契約は必ずしも一生涯住めることを保証するものではなく、買い戻しを約束するものでもありません。買い戻しを希望する場合は、あらかじめ契約内容に盛り込んでおく必要があり、買い戻し価格は売却価格よりも高くなる場合もあります。なお、売却価格は相場の6~7割が一般的です。
参考:国土交通省不動産・建設経済局不動産業課「不動産取引に係る新たなサービス形態について」
つまり、持ち家の「老後の固定支出を抑えやすい」というメリットが吹き飛んでしまうだけではなく、賃貸の家賃負担や契約終了のリスクを背負うことになります。条件によっては、修繕費の支払いも借主負担となったり、介護リフォームなどができなかったりして、持ち家と賃貸、それぞれのデメリットを同時に引き受けることになりかねません。
「住み替える」ならOK、「お金が心許ないから」はNG
では、リースバックは利用してはいけないしくみなのでしょうか。必ずしもそうとも限りません。筆者が選択肢の一つとして検討できると考えるのは、近い将来に住み替えや生活の再設計を検討していて、今の家に住む期間が限定されるケースです。
例えば、離婚後の財産分与で自宅と一定の金融資産を得たものの、その家に住み続ける気持ちはなく、売却を考えている。ただ、査定額には納得できず、すぐには転居先も決められない。このようなケースでは、通常の売却などと比較した上で、住み替えまでの選択肢として提示したことがあります。
また、病気などによって住宅ローン返済が難しくなり、生活全体を立て直す過程で、数年後の転居を前提として検討するケースも耳にしたことがあります。国土交通省が示す利用例では、高齢者施設へ入居できるまでの期間や、住宅を建て替えるまでの期間など、退去時期とその後の行き先が想定されています。
参考:国土交通省「住宅のリースバックに関するガイドブック」
いずれの場合も、「いつまで住むのか」という出口があり、売却後の家賃、転居費、その後の生活費まで見通せる相談体制の中での利用を想定しています。
少なくとも、できる限り今の家で人生の晩年を過ごしたい高齢者に、先のお金が心許ないからという理由だけで、いきなり勧めるものではないと考えています。

