ドラッグストアは、この10年で約2倍、6兆円に拡大した巨大市場だ。数少ない成長分野「健康市場」をめぐる戦いの実相に迫る。
「アマゾンが参入」「ビックカメラが価格引き下げをけん引」――と、盛んに報道される大衆薬のインターネット販売。その経緯を整理しておこう。
発端は09年の薬事法改正にあたり、厚生労働省が省令で、大衆薬のネット販売を規制したことだった。これにネット販売事業者の「ケンコーコム」と「ウェルネット」が猛反発。国を相手取って訴訟を起こす。最高裁まで持ち込まれた末、13年1月に「省令は無効」とする判決が下され、実質的に販売が解禁された。それ以降、家電量販店のヤマダ電機やビックカメラ、事務用品のアスクルといった他業界の大手が相次いで参入した。
ネット販売も含めたeコマースは市場規模9兆円。拡大市場だが、大衆薬は全体の1%にも満たない。
一方で「養毛剤や精力剤など、店頭で買うには勇気がいる商品も、ネットなら買いやすい。ネット通販の『医薬品化粧品小売り金額』(経済産業省調査)は07年に1410億円だったのが、11年には4200億円に拡大しています」。「薬局新聞」編集長の川畑朗さんはこう指摘し、消費者心理の動きに注目する。
安倍晋三首相が掲げる「日本再興戦略」でも成長分野に挙げられた大衆薬のネット販売。実店舗には気になる存在だが、各社の店舗責任者は、異口同音に語る。
「ネット販売の特徴は低価格や利便性だが、人を介していないがゆえの情報不足があります。医薬品も化粧品も、お客様の多様なご質問に応えてファンづくりをしていきたい」(スギ薬局熊味店・中根直也店長)
「風邪の対策で『パブロンを毎日飲んでいる』というお客様もいるが、僕たちは『薬だけに頼らないほうがいいですよ』とアドバイスします。風邪薬は種類も多く、強い薬には副作用もある。ビタミン類をとったり、休むことも大切だと伝えているんです」(サンドラッグ川崎駅前大通り店・稲島大志さん)