医師の自分が病気になったら
在宅での看取りをしている僕の診療所に来る患者さんは、病院での治療を中止して、自宅で最期を迎えることを選んだがん患者さんとその家族です。なので、僕がすることは、「がんが大きくなって死ぬ」のではなく、人は「誰もが老いて弱って死ぬ」ということを前向きに伝え、家族の内面もケアしながら、患者さんの心の状態を上げること。そして、歩ける人にはできるだけ歩いてもらうこと。それから、医療用麻薬を適切に使って痛みを軽減させることぐらいです。本人が望めば点滴もするけれど、本人が望まないことはやりません。
長年、多くの患者さんと向き合いながら、僕自身、自分が病気になったらどうするか? ということもよく考えます。まず、がんだったら、抗がん剤はやらないし、手術もしないと思います。
心筋梗塞なら病院で治療を受ける
では、がん以外の病気だったらどうするでしょう。僕は具合が悪くなっても体の様子から何が起きているかが、だいたい自分でわかるので、めったなことでは病院に行かないはず。ただ、急に胸が痛くなって「心筋梗塞かな⁉」と思ったときは病院に行くでしょう。心筋梗塞など冠動脈の疾患であれば、現代ではあまりつらい処置なしに、早く見つかれば血液の流れを回復させられるからです。ただし、治療がうまく行かなかった時は、集中治療室なんかに入れないでくださいね。
心臓というのはずっと動いているぶん、ものすごいエネルギーを必要とするので、心臓を動かす心筋には冠動脈という血管が張り巡らされています。その冠動脈が詰まって血流がちょっとでも途絶えると、その部分の心筋が動かなくなり、たとえば1分間に5リットル血液を送り出していたのが3リットルとか4リットルしか送り出せなくなって、急激に苦しくなります。もう1つは、心筋梗塞とは別の症状ですが、冠動脈のうち、髪の毛ぐらい細い血管が狭くなったり動かなくなると、一時的に血液が流れなくなって「痛~い!」となります。
僕が医者になった三十数年前は、若い人でも心筋梗塞になると助からずに亡くなる方が大勢いました。でも今は、「痛~い!」と言っているうちに病院へ行き、緊急カテーテル検査をして血管の閉塞部分を見つけ、そこを広げる治療をすると血流が蘇り、以前なら亡くなっていたような方々の多くが助かっています。それほど心臓系の医療は進歩しています。
ほかに僕が病院に行くとしたら……。たとえば、黄疸が出たらがんのせいかもしれないけれど、胆石の可能性もあって、胆石かどうかは検査しないとわからない。胆石症だったら手術をすれば助かるだろうから、とりあえず検査だけはしとこうかなと思うかもしれません。あとは、虫垂炎。いわゆる盲腸の炎症である虫垂炎も病院に行かないと診断はつかないので迷うところです。
医師の僕でも、どこまで回復の可能性を求めて病院に行くか、判断は難しいですね。

