事件は誕生日ディナーで起こった

その後も、毎日仕事終わりにLINEを交わし、次のデートの行き先や、結婚後に住むエリアについても話題に出た。二人の交際は順調で、それから二度ほど、都内でランチデートを楽しんだ。

4回目のデートは、彼女の誕生日が近いということで、ディナーの約束になった。

彼は「お誕生日には何が欲しい?」と聞いてくれたが、彼女はまだ結婚が決まったわけではないし、高価なプレゼントをねだる気持ちも一切ない。彼の気持ちに感謝し、「考えておきますね」と答えた。

事件は、そのディナーデートで起こった。

彼が選んだ店は、表参道の路地裏にある瀟洒しょうしゃなレストラン。雰囲気、料理の味、サービスともに最高レベルの店だった。

二人がお酒の入ったデートをするのは、初めてのことだった。彼女はお酒がほとんど飲めず、会社の仲間との飲み会でも、乾杯の1杯と、せいぜいもう1杯くらい、アルコール度数の低いお酒をたしなむ程度。

それに対して彼はかなりの酒豪らしく、日頃からビールでも日本酒でも、焼酎でもワインでも、何でもござれ。

レストランは彼が何度か訪れたことのある店で、食事に合わせたワインのペアリングをすすめられた。彼女は「私はほとんど飲めないので、グラスでいただきます」と遠慮したが、彼が「飲めなければ僕が飲むから、一緒にペアリングにしましょう」と言うので、それに従った。

ワインのペアリングとは、ソムリエなどが料理の種類や味付けに合わせて、その味を引き立てる相性の良いワインをサービスしてくれるというもの。値段を見比べながらワインを選ぶ手間がなく、ボトルでオーダーする必要もないため、コース料理にペアリングを用意している店は少なくない。

高級レストランのディナー
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1杯目のシャンパンで限界だった

彼女のバースデーを兼ねたディナーが始まった。

1杯目のシャンパンは口当たりがよかったが、お酒の弱い彼女は胃がカーッと熱くなり、これ以上は飲めないと思った。料理はどれもおいしく、一緒にサービスされるワインも、お酒に詳しくない彼女でも一口飲めばおいしいと感じた。

だが、彼女の酒量は1杯くらいが限界。2杯目の白ワインも、そのほとんどを彼に手伝ってもらい、やっとグラスを空けた。普段はカクテルなどの薄めのお酒をほんの少し飲むくらいだから、彼女はワインや日本酒は苦手。とくに苦手なのは赤ワインで、過去に酔いつぶれた経験もある。赤ワインがペアリングで提供されたところで、「赤ワインは苦手なので、飲んでくださいますか?」と彼に頼んだ。

彼は喜んで、赤ワインを二人分飲んだ。ワインの味は彼の好みだったようで、追加で赤ワインをオーダーした。彼女のグラスにも赤ワインが注がれる。