先に同僚を蒸留しよう
だが、Colleague Skillが打ち出した「人間を蒸留する」というコンセプトは、単に不気味なだけでなく、実際に労働者たちの不安をかき立てている。中国版インスタグラムと呼ばれる「小紅書(RED)」では「#AI不安」というハッシュタグの閲覧数が数百万回規模に達している。あるユーザーは「先に同僚を蒸留しておけば、自分はもう少し長く生き残れるかもしれない」と皮肉交じりに投稿した。
人間を「スキルの集合体」として捉え、個人を置き換え可能にするツールは、すでにさまざまな分野で実験が進んでいる。中国では今年初めにオープンソース型のAIエージェント「オープンクロー」の利用が急速に拡大したが、企業での実用性はまだ限定的だ。そこでColleague Skillのようなツールを使い、従業員に日々の業務を細部まで記録させ、特定のタスクやプロセスを自動化する動きが活発化した。
米エモリー大学でAIと労働を研究するハンチェン・ツァオ助教授は、企業がこのようなツールを用いて、従業員の知識や業務フロー、意思決定のパターンに関する豊富なデータを得られると述べている。その結果、「どの業務が標準化・システム化できるのか、どの部分に人間の判断が依然として必要なのかを把握できる」と同氏は指摘した。
AI推進の影で職に就けない大量の学生たち
中国政府は、「AIプラス」と呼ばれる取り組みにより、主要セクターにおけるAI導入率を来年までに70%、2030年までに90%に引き上げようとしている。だが、ロイターによれば、AI関連の求人が昨年74%も急増した一方で、そのブームの裏では1270万人もの大学卒業生が初任給の低下と求人の減少に直面している。シティグループは最近のレポートで、中国の全雇用の9.6%がAIによる置き換えの高いリスクにさらされていると推定したが、その中でも20代の労働者のリスクは13.6%に達していた。
「ほとんどの人の業務は、完全にオープンクローに置き換えられる。自分の作業フローを全てAIエージェントに書き込んでしまえば、その人は基本的に解雇される」と、アリババなどのハイテク大手が本拠を置く杭州市に住み、大手ネット企業に勤める26歳の契約社員はロイターの取材に語っている。

