AI置き換えのための解雇は違法の判決も

AI投資の加速と業務効率化を理由とした大規模な人員削減は、米国のテック業界ではすでに日常化している。メタとマイクロソフトは直近で、それぞれ約8000人と約4800人の削減を発表した。だが、中国政府は企業が迅速にAIを導入することを望んでいるものの、社会の安定を脅かすほどの規模の解雇が発生することは求めていない。

メタヨーロッパ本社
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米紙ウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)は5月の記事で中国当局が昨年末、ハイテク企業などの雇用主に対し、AI導入に伴う従業員の解雇を控えるよう求めたと報じた。中国の労働法では、以前から20人以上、または従業員の10%以上を対象とする大規模リストラを行う場合、企業は事前に労働組合への説明や労働当局への届け出を求められていた。だが近年は、企業側がAI導入を理由とした人員削減ではないことを証明しなければならないケースが増えている。

杭州市の裁判所は4月末、従業員をAIに置き換えて解雇したフィンテック企業に対し、その解雇が違法であるとの判決を下し、約26万元(約630万円)の賠償金を元従業員に支払うよう命じた。この元従業員は、同社でAIモデルのユーザー応答をレビューし、評価する管理責任者を務めていた。だが、2025年初頭、中国製の大規模言語モデル「DeepSeek」の登場によってAIブームが加速するなか、会社は元従業員に対し、別の職務への配置転換と40%の給与カットを提示。拒否すると、雇用契約を解除したという。

それでも“静かな解雇”は続く

同様の判断は、北京でも示された。前出WSJの報道によれば、ある中国のハイテク企業で15年間にわたり地図データ収集の仕事に従事していた男性は、雇用主がAIを使って仕事を自動化し始めた結果、2024年になって職を失った。彼は雇用主を相手取って北京市労働人事紛争仲裁委員会に仲裁を申し立て、不当解雇に対する賠償を請求。同委員会は解雇を違法と認定した。

そんな中、AIによる効率化を目指す中国企業は、政府の監視を避ける目的で、小規模で「静かな解雇」を密かに進めているとロイターは報じている。アリババのクラウド部門のエンジニアは、同社の一部で始まった人員削減の取り組みが、大規模なレイオフではなく、段階的な削減や自然減を通じて進む可能性が高いとコメントした。