「フィッティング」という方法で補正している
これらの問題に対処するため、気象庁では、得られた数十年分のデータをヒストグラム(ある値を観測する回数を棒グラフにした分布図)にして、データの少ない右端の部分、すなわち最大雨量付近のヒストグラムの形を、全体の形から推定するという方法を取っています。これを、ここではフィッティングと呼びます。図表1にその模式図を示します。
フィッティングをすることで、誤差の大きい右側(値が大きい側)の裾野の形を補正することができ、さらにデータサンプル量が足りない場合は、裾野の曲線を先まで延ばすことで、より頻度の低い50年に1度、100年に1度といったレベルの雨量を推定することができるようになります。このようにフィッティングを行って発生確率を推定できる状態にしたグラフの曲線を表す関数のことを「確率密度関数(PDF:Probability Density Function)」と呼びます。
それでは、最初の疑問に戻って、なぜ50年に1度のはずの異常気象が近年は毎年のように起こっているように感じるのか、を考えたいと思います。筆者は、これには3つの理由があると考えています。ただし、個人的な解釈も入っているのでご注意ください。
理由①データのグループが違う ②情報を得やすくなった
まず1つ目の理由は、大雨がいろいろな時期に日本各地のさまざまな場所で起こっているから、です。例えば、ある場所で豪雨が発生すると、担当者は過去数十年のこの地域の同じ時期のアメダスのデータを持ってきて、何年に1度レベルの雨だったかを、フィッティングして計算します。仮に、その翌月に近隣の県で大雨が降ったとすると、今度はその地域の該当月のデータを使って同じようにヒストグラムを描きます。
つまり、解析に使ったそれぞれのデータグループは、地域も時期も異なることになります。ニュースを見ていると、全国各地で発生する大雨のニュースがまとめて入ってきますので、あたかも50年に1度の大雨を何度も経験しているような気分になってしまうかもしれません。
2つ目の理由は、この「ニュース」に関連しています。近年、テレビだけでなく、インターネットやSNSなどの急速な普及により、たくさんの情報が1度に手に入る時代になりました。
30年前は、遠く離れた県の情報を身近に得ることは少なかったでしょうが、メディアの発達により遠くの気象災害の惨状を身近に感じることができるようになったが故に、異常気象があたりまえのようにしょっちゅう起こっているような感覚になることも十分にありえます。

