計算とは中学受験の「根幹インフラ」

9月からの志望校対策(過去問演習)という「実戦フェーズ」に入れば、もう基礎に戻ってやり直す時間は1分もありません。夏休みは、その基盤を固めるための文字通りの『最終納期(デッドライン)』。

ここを落とした家庭は、秋以降、過去問を解くたびに計算ミスによる失点を繰り返し、どこが本当の弱点なのかすら見えなくなる「手戻り(やり直し)の連鎖」へと突入し、プロジェクト全体が完全に機能不全に陥ることになります。

ビジネスの世界に置き換えてみてください。基礎インフラ(土台)の耐久テストも終わっていないグラグラの地盤に、どれほど素晴らしい設計の高層ビル(過去問演習)を建てようとしても、建物の自重によって一瞬で地盤沈下を起こし、瓦解するのは当然の結末です。計算とは、中学受験という巨大なプロジェクトを成功させるための「根幹インフラ」そのもの。

夏休みという納期までにそのインフラ構築を完了できず、秋からの実戦フェーズに突入した家庭は、本番を前にプロジェクトごと跡形もなく崩壊するのです。

「ドリルを一通り解いてやり直す」学習はNG

ここで、すべての中学受験の保護者に、指導者として極めて冷酷な、しかし絶対に目を背けてはならない「現実」を突きつけたいと思います。

家庭での計算学習において、最も普及しており、かつ最も子供の脳を破壊している悪習があります。それが、「算数ドリルを一通り解いて、丸付けをし、間違えた問題だけをあとからやり直す」という、一見すると極めて真面目で、どこの家庭でも推奨されている学習風景です。

算数のドリル
写真=iStock.com/takasuu
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断言しましょう。その「間違えてから、あとでそこだけやり直す」という勉強をさせている限り、お子様の計算ミスは入試当日まで1ミリも減りません。それどころか、やればやるほど「計算が下手」になっていきます。

なぜなら、計算練習の唯一の目的は、「出された問題を、最初から時間内に、すべて全問正解させて、その日のワークを即座に終わらせる」こと、それだけだからです。

それなのに、「間違えたから、あとでやり直せばいい」をデフォルト(初期設定)にしている家庭は、もはや、わざわざ「本番で間違えるクセ」を家庭で身につけさせているとも言えるのです。