新宿中村屋創業者を献身的に看病

病院での和は忙し過ぎて、子どもたちのことを考えている余裕もない。自分が担当する患者の看護をしながら、病棟の他の患者たちの状態も注視し、何かあれば看病婦に指示をだして即座に対処させる。

何事にも一切手を抜かない。また、生まれながらの世話好きな性格にくわえて、愛と奉仕を説くキリスト教の教えが仕事への熱量を増幅する。手を抜かないだけでなく、やらなくてもいい事までやって仕事を増やしてしまう。

この頃、和が担当した患者のなかに相馬愛蔵そうまあいぞうがいた。後に新宿中村屋の創業者となる男だが、当時はまだ東京専門学校(早稲田大学の前身)に学ぶ17歳の若者。下宿で疥癬かいせんに感染して入院した。疥癬はヒゼンダニの寄生によって発症する。ヒゼンダニは肉眼ではほとんど見えないほど小さく、気がつかないうちに皮膚内で大量増殖してしまう。感染した人は体中に赤い湿疹ができ、激しいかゆみに襲われて七転八倒する。