「効果なし」を謳いながら、ハイライトする解説本

きっとハイライトとは異なる特別な方法を取り入れているに違いありません。私も興味本位で、それらの主張をしている方の本や記事を読みました。その結果、違和感しかなかったのです。なぜなら対案がないのです。それどころか、「ハイライトは効果がない」と主張する本が「ハイライト」を用い、重要な部分を太字にしていたり、囲み線が引かれていたり、見出しが強調されているのです。

なかには、ダンロスキー教授らの結果を紹介している著者自身が「実は私もハイライトをよくしています」と正直に書いているものもあります。

これらの著者の主張をまとめると「ハイライトは科学的に効果が低い、そこで、私はハイライトをする」となります。これは矛盾しています。画期的なことを述べようとして、空回りした結果です。

ハイライトに関する研究をもう少し丁寧に見ていきましょう。

ポンセら(2022)の分析では、学習者自身がハイライトする場合には小〜中程度の記憶改善効果があり、教材側で要点を示したハイライト(提供シグナリング)は、記憶・理解ともに中程度の効果が確認されています。

つまり、「ハイライトの効果が低い」と一括りに断言することはできないのです。

「覚える」には不向き、あくまでも復習のため

ここで問題になるのは、ハイライトを何のために使っているのかという点です。そもそもハイライトの目的は何でしょうか。線を引いたら覚えられるのでしょうか。そんなことはありません。本来ハイライトは、膨大な情報の中から重要な箇所、復習する場所を「選別」するために行う目印のはずです。

ハイライトされた本を読む人
写真=iStock.com/FatCamera
※写真はイメージです

目印をつけることで、後で復習する際の「検索時間」が短縮でき、「あれもこれもブルドーザーのように片っ端から復習するのではなく、重要な部分に集中して復習ができる」のです。つまり、ハイライトには記憶することとは別の目的があるのです。

しかし、いつの間にかハイライトの目的がすり替わっているのです。「線を引くこと」自体が「覚えるための行為」だと思い込まれてしまったのです。目的を理解していなかったら、成果が出るはずがありません。

ハイライトの「勘違いされた目的」に効果がないことは容易にわかります。それをデータで示したのがダンロスキーらです。つまり、ダンロスキーは「ハイライト」自体を否定したのではなく、線を引くことがゴールになりがちな「脳を使わないハイライト作業」では学習効果が出にくいと指摘したのです。