最良の評価材料は必ず導入部に

評価の内容が批判的な方向に傾いている場合でも、初めに肯定的な内容を持ってくると、心理的な効果がある。冒頭部分で、社員がこれまでに達成した業績に言及しておくと、そのあとで今後の改善点について打ち出した提案が、受け入れられやすくなる。以前に設定した課題(たとえば前回の評価のときに提案したこと)に対する業績などを結びつけていけば、客観的になると同時に、進歩した内容が具体的に伝わる。また、そうすることで、社員は自分が評価されることに関する特定の基準が事前にわかるため、公正であるという印象を与える効果がある。

評価する側は、査定の基準をはっきり伝える必要があると同時に、社員の存在価値は、数字やチェックリストだけで判断されるのではないという認識を持つことが必要だ。「2002年度の決算収益75万ドルのうち、ジムは、1月に設定された目標を27%上回る成績を挙げた」というように、特定の業績について述べ、さらに次のような、個人の性格と関連づけた、より全般的な業績についての記述を加える。

「現在の景気不振の中で、マークが営業予測を上回る成績を挙げたことは、高く評価される。前向きの忍耐力とイノベーション精神を原動力として、マークは、わが社の従来の枠にとらわれずに、新しい顧客層にも目を向けた。できることはすべてやってみるという彼の意欲的な姿勢は、同僚たちの手本となるものだ」

結果だけを見るのではなく、その結果を生むに至った個人的な資質や仕事に対する姿勢にも目を向けることによって、ほめ言葉も個人に向けたものとなり、最終的に社員の誇りとやる気がさらに高まることとなる。

社員の業績をしかるべく評価して好意的な空気が生まれたら、それを重要なはずみとして、次回の評価段階を視野に入れた現実的なターゲット(目標)を掲げる。こうしたターゲットについて説明する言葉の中には、数量で示すことのできる特定の目標と、より抽象的な、社員の性格と関連づけた目標を組み合わせる。目標を高く掲げる場合、基準を狭い範囲に絞らずに、達成可能な幅のある範囲で設定するのがよいだろう。たとえば、「新規の仕事で150万ドル相当の売り上げをめざしてほしい」と言うよりも、「売り上げを10%から20%伸ばしていこう」と言うほうがよい。

期待される業績に柔軟性を持たせることは、社員に息苦しさを感じさせない、という心理的効果がある。