病気をしたときは担当医とできるだけいい関係で治療を進めたいもの。患者としてのコミュニケーションのコツを伝授しよう。
一昔前までは、入院すると相部屋の患者同士の会話は、医師への謝礼の話で持ちきり……といった話も聞いたことがある。公立の病院では原則禁止されており、いまではさすがに伝説と化しているかもしれないが、実際はどうなのであろうか。
「お金は絶対ダメです」
と尾藤誠司さんは一刀両断する。
「そもそも医師には確固たる倫理規範があるので、謝礼をいただいたからと特定の患者さんを厚待遇することはありえません。謝礼を渡せば、患者さん側は満足するのかもしれませんが、医師側は逆に何かを期待されているようで、負担を感じてしまうでしょう」
とはいえ、中元や歳暮の習慣のある日本人の心情として、お世話になったお礼の気持ちを伝えるためにどうしても何か渡したいと感じる人もいる。
岡本左和子さんは「謝礼をすることで、患者さんの気持ちが落ち着くなら、そういう方法もあるのかもしれません。しかし、その場合も医師個人に現金を渡すのではなく、病院、または主治医が所属する診療科などに、お金を寄付したほうが喜ばれると思います」と話す。
寄付のタイミングについては、特別待遇はないといわれても、それでも何かを期待せざるをえない人であれば手術や治療の前にするだろうし、単に元気にしていただいたという感謝の気持ちからなら、治療後であろうか。
お金でなく、どうしてもモノを渡したい場合はどうすればいいのだろう。尾藤さんは、医師の立場から「例えば実家で獲れた野菜とか、釣りに行った釣果でつくった干物といった心のこもった贈り物であれば、ありがたく受け取りやすいですね」と語る。
高価な置物などは、飾っておかなければいけないなど、逆に相手に負担になりがちだと語るのは岡本さん。
「例えば花やお菓子といった、残らないものであれば受け取るほうも気軽でいいのではないでしょうか。でも、これとて本来は必要ないと思います」
特別待遇を望んで高額な謝礼やモノを渡すのは、時に医師の心証を悪くすることがある。倫理的にも問題が生じるかもしれない。お礼をしたいなら、やはり寄付という手段を上手に活用するのが1番いいのではないだろうか。