病気をしたときは担当医とできるだけいい関係で治療を進めたいもの。患者としてのコミュニケーションのコツを伝授しよう。
岡本左和子
米国ジョンズ・ホプキンス病院でペイシェント・アドボケートとして勤務。東京医科歯科大学で医療コミュニケーション研究を行う。NPO法人架け橋の理事。

インフォームド・コンセントが叫ばれる時代、医療コミュニケーションの重要性が認識されてきた。不満や疑問があったら、担当医と積極的にコミュニケーションをはかり、納得いくまで説明を受ける。これはベストな治療を受けるためには欠かせないことである。

診察室に初対面の医師が座っている。どんな医師だろうか、丁寧に話を聞いてくれるだろうか、的確な診断をしてくれるだろうか。少々の緊張感もあるだろう。さて、まずはどうする?

アメリカで患者と医師間をつなぐ「ペイシェント・アドボケート」として活躍していた岡本左和子さんは、「『こんにちは』『○○といいます』くらいはいいたいもの。名前は医療安全面からもフルネームを名乗ったほうがいいでしょう」と話す。

では医師側はどういう気持ちで初対面の患者に向き合うのだろうか。医療安全などに積極的な発言を続けている内科医の尾藤誠司さんはいう。

「まず、この患者はどういう人なんだろう? と考えます。それはどういう性格で……といった人に対する興味ではなく、どんな症状を抱え、重症度はどの程度なんだろうという、純粋に医学的興味の対象として考えるのです」

現在の症状について話すときも、少々心得が必要になってくる。尾藤さんは「『胃の調子が悪いんですが、胃がんじゃないかと思うんです』などと、自己判断で診断を決めつけられると、医師はイラッとしますね」と語る。

「非常に専門性の高い分野なので『胃のこのあたりが痛いんですが』のような主訴でいいんです。それについて、患者さんの重要と思える情報を問診をしながら引き出し、該当しない疾患を除いていくという、引き算のプロセスをし、確定診断にたどり着くのです」