代替ルートの紅海側を攻撃されたら

アナリストによれば、トランプが封鎖を行う最大の狙いはイラン経済への打撃だ。

経済制裁下のイランにとって原油輸出は経済の中核であり、3月以降はイランの船舶だけが定期的に海峡を通過しているため、原油価格の上昇も背景に数億ドル規模の増収になっている可能性があるとブルームバーグは分析している。

そのイラン産原油に対する米国の封鎖措置は、イランに最大限の圧力をかけるだけでなく、「史上最悪の世界的な原油供給ショック」を引き起こすと、米コンサルティング会社ラピダン・エナジー・グループのスコット・モデルCEOは指摘する。

「トランプは、圧力強化のためには原油価格の上昇も受け入れているとみられる。米国のガソリン価格が4ドルを超えても、経済的苦痛を先に耐えられなくなるのは米国民ではなくイランのほうだと考えているのだ」

また、高騰する保険料の影響で国際海運はホルムズ海峡を回避し続ける可能性が高く、世界経済への打撃は続くとみられる。

さらに現在の一時的停戦が崩壊すれば、イランが湾岸諸国のエネルギー施設への攻撃を再開する懸念もある。開戦直後にはカタール、サウジアラビア、クウェート、アラブ首長国連邦の主要施設が攻撃を受けた。

サウジアラビアのラス・タヌラとヤンブーの両製油所も被害を受け、特にホルムズ海峡の代替ルートとみられる紅海側のヤンブー製油所が攻撃を受ければ、エネルギー供給に大きな影響を及ぼす可能性がある。

既に湾岸諸国で事業を行う25社以上(国内外のエネルギー企業を含む)が不可抗力を理由に契約履行が不可能だとする通知を取引先に送っている。

イランの大口顧客、中国はどう出る?

中国外務省は、この封鎖のエスカレーションを「危険で無責任」と批判した。

郭嘉昆報道官は14日、米国の逆封鎖措置は「対立を激化させ、緊張を高め、停戦を損なって、海峡の安全航行にさらなる悪影響を与えるだけだ」と述べた。

さらに「海峡の航行が妨げられている根本原因はイランでの戦争であり、解決策は早期の全面停戦だ」と強調した。

中国はイラン産原油の最大の顧客であり、輸出全体の9割以上を購入している。「影の船団」の主要な受け入れ先でもある。ホルムズ海峡が混乱すれば、中国にも直接ダメージが及ぶ。

もっとも、中国の輸入原油全体に占めるイラン産の割合は約13%にとどまる。ユーラシア系コンサルティング会社マクロ・アドバイザリーのクリストファー・ウィーファーCEOは、この封鎖は中国にとって不便ではあるが、他の輸入国と比べて特段影響が大きいわけではないと指摘する。

また、中国はエネルギー供給の多様化や陸上輸送ルート、約100日分とされる戦略備蓄により、近隣諸国より危機に対する対応力が高い。

ただし危機が長期化すれば、世界第2位の経済大国である中国も影響を受ける。特に石油化学、航空、海運、重輸送分野が脆弱だ。

さらに、この封鎖のタイミングについて、5月中旬に予定されているトランプと中国の習近平国家主席との会談に影響を及ぼす可能性があるのではないかとの疑問が浮上している。

ラピダン・エナジーのモデルは、トランプが米中首脳会談のために強硬姿勢を改める可能性は低く、会談自体を頓挫させる可能性も低いとみている。

「米中首脳会談でも、体面を保った形でイラン戦争に決着をつけるというトランプの決意が揺らぐことはない」と、モデルは言う。

「中国のほうも、機会主義的な外交介入を除けば、戦争終結に向けて追加的な圧力を行使する意思を示していない」

当記事は「ニューズウィーク日本版」(CCCメディアハウス)からの転載記事です。元記事はこちら
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