知っておきたい認知症のしくみ

では、認知症はどうして起こるのか、簡単にご説明します。

認知症のなかで最も多いのがアルツハイマー型で、認知症の原因の約七割を占めています。これは長い年月をかけて蓄積したアミロイドβやリン酸化タウといったたんぱく質によって神経細胞が破壊され、脳の萎縮が起こるアルツハイマー病が原因となって発症する認知症です。

特に記憶の中枢である海馬にアミロイドβが沈着し、神経細胞が傷つき、やがて脳の萎縮につながります。

アミロイドβが脳に沈着し始めてから認知症を発症するまでには、20年くらいかかるともいわれています。ということは、80歳で認知症を発症した人は、60歳くらいから原因物質がたまり始めていることになります。

アルツハイマー型認知症に関しては、発症しやすさに関係している遺伝子も見つかっているようですが、発症するかどうかは先天的な要因でのみ決まっているわけではありません。ただ少数派ですが、若年で発症するアルツハイマーの中には「家族性アルツハイマー」と呼ばれているタイプがあり、遺伝子の変異が関係しているといわれています。

アルツハイマー型認知症に関しては、近年、初期の段階で投薬すると進行が抑えられるとされる医薬品も開発されています。早めに専門医の診断を仰ぐとともに、進行を遅らせる生活習慣も合わせて対策を講じることで、認知機能の低下を抑制すことが可能です。

【図表2】認知症の種類と割合
出所=『80歳、これからが人生本番』(世界文化社)

血管性認知症は、脳梗塞、脳出血、脳動脈硬化などのために、神経の細胞に栄養や酸素が行き渡らなくなり、その結果その部分の神経細胞が死んだり、神経のネットワークが壊れることで起こる認知症です。

ダメージを受けた脳の部位によって、症状が異なるため、「できること」と「できないこと」に差が出るのも特徴のひとつです。

私の夫が罹ったレビー小体型認知症は、レビー小体と呼ばれる異常なたんぱく質が脳に蓄積し、細胞を破壊して起こるレビー小体病が原因となる認知症です。

特徴として、現実には見えないものが見える幻視があります。子どもの頃、山梨県の田舎で育って自然が身近だった夫は、うちの庭に野生の動物がやって来て縄張り争いをしている様子が見えていたようです。

手足が震えたり筋肉が固くなったりといった症状も現れ、歩幅が小刻みになり、転びやすくなります。前頭側頭型認知症は、性格や行動の変化が特徴で感情のコントロールができなくなったり、突飛な言動が増えたりします。いずれにせよ、ちょっとおかしいかなと思ったら、早めに医療機関で診察を受けるようにしましょう。