唯一の解決策「インフレ税」とは
では、インフレ税とは何でしょうか。日本経済新聞は次のように解説しています。
「物価上昇(インフレーション)でお金の価値が下がることで政府の借金の返済負担が実質的に軽くなること」
そして、こうも書かれています。
「インフレ税は政府にメリットがあるが、政府債務はもともと国債発行などを通じて民間から調達したもの。貸し手である家計など民間部門からみればマイナスになる」
つまり、インフレ税というのは、債権者である国民から、債務者である政府への実質的な富の移行なのです。
と言っても、なかなかわかりづらいので、個人タクシーの運転手を例に考えてみましょう。
個人タクシーの運転手が1000万円の借金をしました。タクシーの初乗りが1000円だとしたら、1000万円を返すのはかなり大変で、何年、何十年もかかるでしょう。しかし、インフレによって初乗りが1万円になり、10万円になり、100万円になったらどうでしょうか。初乗り100万円なら、1000万円の借金など、すぐに返せてしまうでしょう。初乗りが100万円になるほどのハイパーインフレになれば、借金はすぐに帳消しにできるということです。
汗水たらして貯めた銀行預金が消える
このように、インフレというのは、借金をしている債務者にとっては万々歳。
他方、お金を貸している債権者や銀行預金をしている人たちは、汗水たらして貯めたお金の価値がどんどん下がっていき、泣くに泣けない状況を招きます。10年かけて1000万円を貯めても、ハイパーインフレでタクシーが初乗り100万円になれば、タクシーに10回乗るだけで1000万円がなくなってしまうのですから。
インフレによって、国民や企業などの民間から政府に富が実質的に移行することになり、これは税金と同じだということでインフレ税と呼ばれます。
日本で最大の借金をしているのは誰でしょうか。言うまでもなく日本政府です。約1342兆円の借金王が、インフレ税で借金を返そうとしたら……。銀行預金をしている国民や国債を保持している金融機関などは目も当てられないことになるでしょう。
前述したように、インフレ、そしてハイパーインフレになれば、債権者である国民から、債務者である政府へ実質的に富が移行します。国民から政府にお金が動くということは、まさに税金と同じ。だからインフレ税というわけです。
このインフレ税は、政府にとって究極の、そしておそらく唯一の財政再建策です。
政府にとっては財政再建できる万々歳の良策ですが、国民にとっては地獄です。
