ギリシャに限らず財政状態が悪化しているPIIGS各国は総じて地下経済の規模が大きい(図)。
さらに「雇用制度が鉄壁」なことが浪費体質を助長した。就労者の多くは公務員や正社員という守られた身分で働いている。公務員数を正確に把握した数字はないといわれるが、推計ではギリシャの人口約1100万人に対し110万人の公務員が存在するといわれ、就労人口比では3割近くを占める。
年金制度も充実しているため将来の不安がなく、江戸っ子のように「宵越しの銭は持たない」ことが当たり前だった。OECDの面白い統計がある。加盟国の中でギリシャの労働時間(正社員、非正社員を含む)は1番長いのである。私たちは「あのギリシャ人が?」と奇異に思うが、正社員の労働時間はフルタイムでカウントされるので、正社員の割合が高い国ほど労働時間が長くなる。全労働者に占めるパートタイマー比率(08年)はギリシャが7.8%、日本は19.6%である。ギリシャ人が勤勉というわけでは決してない。
すべての根底には「ラテン気質」がある
そしてなんと言っても、物事をあまり悲観的に捉えない「ラテン気質」(言語面では違うが)という国民性が大きく影響している。PIIGSのほとんどが南欧寄りの地域でありラテン気質が支配している。そのおおらかさが国や個人の放漫財政と消費につながっているのだろう。
日本の状況はギリシャの真逆である。日本も膨大な財務残高を抱えていてGDP比では200%に近い。国民は将来を不安に感じ老後に備えて貯蓄に励んでいる。その1人ひとりの行動は正しくても、全体としてみると「合成の誤謬」となり、消費が縮小し景気が悪化する悪循環となる。ギリシャを見習えとは言わないが、もう少し楽観的に消費を増やしたほうが、日本経済にはプラスだろう。
1971年、神奈川県生まれ。慶應義塾大学経済学部卒業、銀行系と生保系のシンクタンクを経て、2005年より現職。日本初の地下経済学の専門家。近著に『日本人が知らない怖いビジネス』。