彼ら自身のパワーがヒットの起爆剤
2024年にも彼らに取材する機会があった。
4月に「ライラック」のリリースを控えたタイミングだった。テレビアニメ『忘却バッテリー』のオープニング主題歌として書き下ろされたこの曲。ただ、ヒットの起爆剤となったのはアニメの人気や話題性よりも、むしろ彼ら自身のパワーだった。大森が様々な職業に扮したMVが注目を集め、アニメの視聴者層を超えて楽曲が広まった。2024年の年末には紅白歌合戦など様々な大型音楽番組でこの曲を披露し、それが2025年のロングヒットにつながった。
「ライラック」は青春をテーマにした一曲だ。フェーズ1の彼らの代表曲「青と夏」へのアンサーソング的な意識があったと、大森は語っている。
「ちょっぴり大人になった今の僕たちが歌う青春ソングを書いてみようというのが取っ掛かりです。以前にも『青と夏』という楽曲をリリースしたんですけれど、そこでは青春の爽快さや憂いや甘酸っぱさを『青』と形容していた。もう一度『青』を歌うってなった時に、ちょっとかすみがかって色あせた、でもすごく上品なライラックカラーが頭の中に浮かんだんです」(Yahoo! ニュースオリジナル特集「高校時代から意識した大衆性、かつ深化もさせたい――Mrs. GREEN APPLEが向かう『ふたつの軸の理想像』」2024年5月3日掲載)
「バズる」に頼らないヒットの形
彼らはなぜヒットを掴んだのか。その理由はいろいろあるが、ミセスの人気拡大において特徴的なのは「バズる」という偶発的な力学があまり寄与していない、ということだ。曲に合わせて踊ったダンスがブームになったり、楽曲がミーム化したり、そうしたバイラルが社会現象化することはなかった。むしろ、リスナー一人ひとりの胸のうちに寄り添う楽曲を続けざまにリリースしてきた、その活動の積み重ねを経て人気を広げてきたのである。
「『バズる』という言い方は、ミセスのチームではあまり使わないかもしれないです。大衆という生き物なんて、別にいないので。そこじゃなくて、その人の人生の1ページになれたらいいなということを思っている」(大森)

