明確な「成功のビジョン」

筆者がMrs. GREEN APPLEの3人に初めて会ったのは2023年のこと。「ダンスホール」や「ケセラセラ」といった楽曲がヒットし、初のドームライブを成功させるなど「国民的バンド」として本格的なブレイクを果たそうとしていたタイミングでの取材だ。

驚いたのは、大森の視座の高さだった。メジャーデビューは2015年。その頃から、単に「売れたい」とか「人気者になりたい」ではなく、明確な成功のビジョンを思い描いていた。バンドの結成当初から「大衆に届ける」という理想を掲げていた。小さなライブハウスのステージに立っていた10代の頃から、アリーナやドームのライブを想定して練習やリハーサルを重ねてきた。将来を見据え、高い理想を形にしてきた。大森はこう語っている。

「ポップな方面に間口を広げて全力でやりたいという思いは常に変わらないですね。バラエティ番組に出たい、自分たちの番組を持ちたいという話も結成当時からしていました」(GQ JAPAN「Mrs. GREEN APPLE メン・オブ・ザ・イヤー・ベスト・アーティスト賞――“若者に人気”を払拭した、全世代バンドの新境地」2023年12月8日掲載)

ステージ上のマイク
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フェーズ2でリスナー層が広がった

ただ、バンドは決して順風満帆なキャリアを進んできたわけではない。メジャーデビュー5周年である2020年7月には「フェーズ1完結」を宣言して活動休止期間に入る。2021年12月にはオリジナルメンバー2人の脱退が発表され、5人組から3人組へと編成も変わった。

しかし、こうした雌伏の時があったからこそ、表現の幅は大きく広がった。活動休止期間中に3人はあえて楽器に触らず、厳しいダンスレッスンを受けていたという。2022年3月には「フェーズ2」として活動を再開。バンド編成にこだわらなくなったことによってサウンドや曲調はより多彩になり、ビジュアルイメージもそれまでの固定観念に縛られなくなった。

フェーズ1ではファン層も10代が中心だったが、フェーズ2以降は明るくカラフルな「ダンスホール」や深遠なテーマを歌うバラードの「Soranji」など様々なタイプの楽曲のヒットを経て、より幅広い世代にリスナーが広がっていった。

「フェーズ2の認識として『全ての人を置いていかない音楽をやろう』というのを最初から掲げていたんです。フェーズ1の時の僕らにはどうしても『若者に人気』という枕言葉が先行していたので、どうしたらそれを払拭できるかというのは、休止中にもかなり考えていました。そうした中で『Soranji』という曲を書いて。僕らが根源だと思っていた死生観、自分の中の寂しさ、明日への力強さみたいなものを純度100%の形で出すことができた。それがより幅広い年齢層の方に届くきっかけになったのは大きかったかもしれないですね」(大森)