不動産会社が「50年間の比較」を持ち出す理由

[試算②]50年間の住居費を比較するとどうなるか

購入より賃貸のほうが経済的負担は少ない。そうした試算結果は、購入をすすめたい不動産会社にとっては不都合といえます。そこでよく提示されるのが50年間の住居費比較です。

【図表2】試算2
出典=『得する不動産バイブル ハンコ押す前に読む本』

さきほどのケースで、管理費・修繕積立金、固定資産税、火災保険料などを50年分とすると、50年間の住居費の総額は約1億387万円です。

対して賃貸は1億2550万円となり、購入より約2163万円多くなります。

なぜ賃貸のほうが多くなるのか。それは、購入ではローンが35年で終わるのに対し、賃貸は家賃をずっと払い続けなければならないからです。

そのうえ、マンション価格が7000万円を維持できれば、購入のほうが9163万円有利、ということになります。

試算には絶対入れない重大な要素

②の試算を見て、「やっぱり家は買うべきだ」「買ったほうが得だ」と思う人は少なくありません。しかし、本当でしょうか。

①②のシミュレーションには、実は大きな問題があります。リアリティに欠けているのです。

1.金利が上がらないのは昔の話。今後、金利は上がる
2.管理費や修繕積立金は年数が経つと必ず上がる
3.住戸内の設備は年数が経つと必ず壊れる
4.築50年のマンションが価格を維持するのは難しい
(再開発などで上昇するラッキーパンチの可能性もゼロではないが)
5.賃貸で、50年間同じ部屋に住み続けることはまずない

長い間、金利が上がりませんでしたが、金利は上昇し、返済額は増えると見込まれます。

人件費や建築資材の上昇に伴い、管理費や修繕積立金も上昇傾向です。

また10年、15年と年数を重ねれば、住戸内の設備も壊れていきます。賃貸では基本的に大家さんが修繕してくれますが、購入した場合は自身で修繕しなければならず、修繕費用の負担も生じます。

逆に賃貸は家賃20万円が続く想定としていますが、子育てが終わればコンパクトな家に住み替えるなどで家賃負担が減るのが普通でしょう。

そして、買えば資産になるといっても、30年後、50年後に購入時の価格が維持される可能性は、一部のエリアを除いて限りなくゼロに近いといえます。

つまり、①や②のような試算は成立しない、というわけです。