女性活用すべき理由[5]
両親ともに働いたほうが子供が「イイ子」に育つから

フェイスブックCOOのシェリル・サンドバーグ氏が会社役員・妻・母として生きてきたなかで感じたことを執筆した『リーン・イン』がヒットしている。

本書のなかには、忙しく働く女性の1人として「子育て」に関して思い悩む章があり、こんなくだりがある。

「両親とも外で働いているほうが、子供、特に女の子の発達に好ましい影響がある」

著者は、イギリスで行われた1万1000人の子供を対象にした調査を引用してこう語っているのだが、この調査の内容というのが面白い。

子供の幸福感を調べる項目で、最もその数値が高かったのが、意外や「両親が共に外で働いている家庭の子供」だった。

専業主婦の家庭の子供のほうが母親と過ごす時間が長く幸福度が高いように思えるが、子供にとっては案外そうでもない、という結果になっているのだ。

仕事など社会と接点のある母親や父親と関わったほうが、かえって子供にとっても親と適度な距離感が保たれ、心地よいのかもしれない。

また、この調査の母親の教育水準別、世帯所得の額別に調べたパートでは、共働きの世帯の子供、とりわけ女の子の場合、多動症や悲観症などの行動上の問題を示す割合が1番少なかった。

「(働く)母親にとって(子供と接する時間が少ない)罪悪感のマネジメントは時間のマネジメントと同じくらい重要である」と述べている著者。つまり、子育てにもある種の“割り切り”が必要だという哲学だが、その考えのバックボーンとなっているのが、次のような調査報告だ。

「母親が全面的に育児をした子供とそれ以外の人が育児に携わった子供のあいだでは、発達(認知能力、言語の理解力、対人関係の構築・維持能力、母親と子供の絆など)に何らちがいは認められなかった」

むしろ父親が育児に協力的・積極的であることや、母親が自律的な子育てに賛成であること、さらに両親の仲がよいといったことのほうが、2倍あるいは3倍も子供の発達に影響をおよぼすという調査も引用している。

著者が信頼したこれらのデータが、もし、日本でも当てはまるとすれば、母親が外へ出て働くことに躊躇はいらなくなる。父親のフォローを得られるのなら、夫婦も円満、家族も円満。さらに、子供の頭と体の「発達」もよくなるおまけつきとなるかもしれない。

日本総研 ESGアナリスト 
小島明子

創発戦略センター ESGリサーチセンター所属。SRI(社会的責任投資)型運用における企業評価などが注力するテーマ。
(市来朋久=撮影 PIXTA=写真)
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