原発爆発の無音映像に“爆発音”を追加

ドイツでは、原子力を蛇蝎のごとく忌み嫌っている人が非常に多い。

反原発は社民党や緑の党の長年の主張であり、さらに、公共、および主要メディアの多くが、その主張を共有している。ドイツの主要メディアは左派なのだ。だから、ぼんやりしていると巧みな印象操作に巻き込まれてしまう危険がある。

一番ひどかったのは、事故の当時、公共第2放送が、遠くから望遠で撮影していた原発の水素爆発の映像に、迫力をつけるためか、爆発音を入れたこと。

ドイツの公共放送が、福島の事故を悲劇として取り上げるのは、確かに悲劇なので異存はないが、反原発のプロパガンダに使われては不愉快だ。そんなわけで、福島についての報道には、私はいつも、つい耳をすましてしまう。

福島第一原子力発電所
写真=iStock.com/EyeEm Mobile GmbH
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特に、今回はいつもより神経を尖らせた。というのも、その前日の10日、パリで開かれた国際原子力サミットで、EUの欧州委員会のフォン・デア・ライエン委員長(EUの首相に相当)が、「今後EUは、小型の原子力発電を推進する」と爆弾宣言をしたからだ。

そこで私は、もし、メディアがこれに反発を感じているとすれば、翌日の福島原発事故後15年というニュースを、利用しないはずはないと勘ぐったわけだ。

EU委員長「脱原発は誤りだった」

フォン・デア・ライエン氏は、欧州委員長に就任した2019年12月以来、一貫してGX(グリーン・トランスフォーメーション)を掲げ、化石燃料潰しに専念してきた。また、原発に対しても批判的だったのに、それが突然、「世界各地で起こっている原発ルネッサンスにEUも参加し、効果的なエネルギー供給を促進する」意向を明らかにしたばかりか、ドイツの脱原発は「戦略上の誤りであった」とまで言い出した。

しかも、原発に投資する民間企業には、安全対策コストに対する補助として、2億ユーロを与える。つまり、原発は突然、善玉になった。180度の転換である。

主力として推進するのはSMR(small modular reactors)で、EUは小型原発の世界のメッカになろうとしている。脱原発を核心的なエネルギー政策としてきたドイツにしてみれば、思わぬ強烈なパンチを食らった形となった。

緑の党や社民党は、即座に強い反発を示した。

シュナイダー環境相(社民党)は、「原発回帰は退行する戦略だ。風と太陽こそが、クリーンで、安全で、安価なエネルギーである」。また、緑の党のベテラン議員、ゲーリング=エッカート氏は、「根本的な間違いは、原発を未来のテクノロジーとして議論の場に持ち出すこと。原子力は高価で、のろくて、危険だ」。