独首相が放った驚愕の“一言”

だから、メルツ氏は、フォン・デア・ライエン発言を好機と見て、一気に世間の空気を原発稼働に導くだろうと、皆が期待した。

ところが、同日、メルツ首相は、「我が国の脱原発の決定は修正不可である」と言ったので、私は心臓が止まるほど驚いた。

産業活性のまたとないチャンスを拒絶? 連立を壊したくないばかりに、社民党に逆らえない? メルツ首相の本音は、「社民党が怖いので、原発の再稼働はできません……」?

いずれにせよ、この発言がたちまち炎上したことは言うまでもない。

15年前、ドイツ国民は脱原発を世界に誇り、「いずれ多くの国々がついてくるだろう」と胸を張った。しかし、結局、誰もついては来なかった。今度もまた、EUの方針に背を向け、孤高の民となってしまうのか?

もっとも、メルツ氏は前言を次々に翻す“癖”があるので、このところとみに強くなっている産業界からの圧力で、ひょっとすると、まもなく、口先だけでも原発再稼働を打ち出す可能性はあると思う。

原発回帰を阻む“壁”の正体

しかし、そうなっても、実際問題としてドイツの原発の再稼働は至難の業だ。

いつかこういう話が出てくることを予想して、絶対に再稼働ができないよう、すでに二つの原発では巨大な冷却塔が計画爆破されているし、廃炉が始まっているところもある。

また、無傷であっても、営業の認可は切れているし、安全審査は最初からだし、技術者を集めるだけでも大ごとだろう。ましてや新しいSMRなど導入するなら、認可だけでも何年かかるかわからない。

さらに言えば、ドイツには過激な極左グループがたくさんある。よもや原発建設の話など持ち上がれば、暴力も辞さぬ彼らが大々的な妨害を始めることは間違いない。電力会社がそれでもやりたいと思うのかどうかは、甚だ疑問だ。

それはそうと、EUが次にひっくり返すのは、おそらくGXではないか。EUのCO2の排出量は、世界全体の6%ほど。もし、多くの国が原発に移行していくなら、厳しいCO2規制など外しても、たいした悪影響などないだろうと愚考する。

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